「お父さんは58歳であれだけ老けていて先行きも長くないのか」晩春 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
お父さんは58歳であれだけ老けていて先行きも長くないのか
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:55点|ビジュアル:65点|音楽:60点 )
趣味に合わないと感じてもう小津作品はいいやと思っていたが、原節子の若い頃はどうなのだろうかと気になって観てみる気になった。
相変わらず科白はかぶらないように交互に喋り、小津作品らしいゆったりとした雰囲気で家族模様の話が進んでいく。古き日本の美しい情景ではあるものの、やはりこの演出が古くて退屈に感じる。
戦後間もない時期を背景にして実際にその時期に制作されている。だから日本人の多くが食べ物にも困るようなかなりの貧乏人であったかもしれないが、そんなことも気にしないほどのんびりとした平和な生活を観ていると、裕福で幸せな人たちだと思う。百貨店で買い物したり喫茶店でお茶したり能を鑑賞したりなんて、この時代はきっと普通の人は出来ないよな。そして生活に困窮する話などは出ないまま、親子の結婚の話がどうなるのかという本題に入っていく。
だけどこの時代としてはいい歳なのに何故そこまでひたすらに結婚を否定して父親と一緒にいたがるのかが描かれていないのが気になった。娘の結婚が主題なのだから、そこを教えてくれないと彼女がただの融通のきかないだけの人に思える。結婚を急かされて反発する彼女の内面を教えて欲しい。
監督の意向なのかもしれないが、名優と言われる笠智衆でも科白のいかにも科白です的な不自然な言い方は好きになれない。ただし44歳で58歳の父親役を演じているのはすごい。それにしても当時の58歳は随分と老けて見える。ずっと安定した感情を保ちながら最後の孤独さを表す場面は良かった。
原節子は異国風の堀の深い顔立ちがやはり目立つ。この時代は逆にそういう日本人離れしたところが受けたのだろうか。落ち着いた雰囲気の中で感情の変化がある役どころであったのが印象に残った。