花の三度笠
劇場公開日:1954年1月3日
解説
『平凡』連載の子母沢寛の原作を「花の喧嘩状」以来のコンビ犬塚稔、田坂勝彦が脚色、監督した。撮影、音楽も同じ牧田行正、渡辺浦人。長谷川一夫、山根寿子といった顔ぶれも同上だが、これに「銭形平次捕物控 金色の狼」の山本富士子、「魔剣」の長谷川裕見子、「春雪の門」の村田知英子などが加わっている。
1954年製作/78分/日本
劇場公開日:1954年1月3日
ストーリー
名優嵐粂三郎の御曹子としてしつけられ、今は売出しの若手嵐粂吉は、父にも秘めた恋人--深川芸者の満津次がある。急にもち上った某藩留守居役日下部伊織の身請話で、家をぬけだした彼女が粂吉と相談中、その船宿へ不意にのりこんできた日下部一味との争いとなり、二階から水中におちた日下部がてっきり死んだものと粂吉は早呑込み。満津次ともども駆落ちした。二人は忽ちつかまったが、粂吉は岸壁から海へ転落したまま消息を絶つ。以来三年。--東海道の宿場宿場を、女を尋ねまわる旅渡世の男、その名も疾風の粂と変わる粂吉の姿である。その彼を嵐粂吉そっくりね、と岡惚れして追っかけまわすのは江戸生れのお政、迷惑がって彼が足をはやめる折しも、土地の顔役黒馬の庄五郎が生娘お光にからむのを目にして、さんざん打ちすえる。お光の叔母お倉に彼女を府中の親許鱗屋まで届けてくれと頼まれて、事の行がかり上ことわれず、承引する。府中では父粂三郎の一座が興行していた。男衆の桃六から日下部が生きていること、満津次が豊川の旅篭で女中をしていること、などの消息をきく。さらに彼がじつは贔屓筋の遠山信濃守の子であることを聞かされ、茫然とした。芝居見物にきたお政は、一座に嵐粂吉の姿を見かけないことから“疾風の粂”こそ彼に相違ないと見当つける。豊川へ飛んだ粂吉は、満津次の行方不明を知って落胆する。再び府中を経て江戸に立ちもどった粂吉は、偶然吉原土手で夜鷹に倫落した満津次と会う。恥しさのあまり急流に身を投げる彼女の後を追って、粂吉も飛びこんだ。--間もなく猿若町中村座に三年ぶりで粂吉が出演するとつたえられた。その初日。江戸に帰ったお政はむろん、今は粂吉女房の満津次、実父の遠山信濃守も桟敷に居ならぶ。舞台で白井権八に扮した粂吉が大立廻りの最中、彼に遺恨をふくむ日下部一派が匕首を閃めかせて舞台にかけ上ってくる。しかし粂吉の活躍と、小屋の者の応援で、難なく彼らは退散、日下部は遠山の配下に捕えられる。芝居は遅滞なくすすめられた。