「闘うことと理不尽さと」バトル・ロワイアル parsifal3745さんの映画レビュー(感想・評価)
闘うことと理不尽さと
意外に評価が高い人が多く、未視聴だったので見ることに。深作欣二監督作品だけあって、暴力と人情の葛藤の場面が多いと感じた。場面設定的には、昭和的な理不尽な展開。大人の言うことを聞かず、不登校や引きこもりも多く、我儘し放題での若い世代を恐れた年長世代がBR法を可決?親の承諾を得てBRを実施?普通に考えればあり得ない。彼らの所為ではなく、そのような社会を創った大人の責任だということで納得するはずはない。ただ、そこで突っかかっても仕様がない映画だ。
であれば、何を感じ取れるか?自分は、理不尽さと闘うことの大切さ、しかし、闘うことが目的になるのではなく、何を守るために闘うのかが問われるのだというテーマ性を感じた。最後まで生き残っていく生徒は、恐怖に駆られて殺人を犯すのではなく、自分が大切にしている友人や仲間のために闘おうとする。生きるに値する何かを守るために闘うのだ。
殺し合いの描き方としては、昭和的で漫画的な安易な展開だった。尺の問題はあるだろうが、あのように簡単に普通の高校生がすぐに殺し合うというのは起こりえないだろう。ある意味、やくざ映画の世界が、いきなり高校生の世界にお引越ししてきたような違和感を感じた。一人しか生き残れないという設定ならば、むしろ皆で力を合わせてバトルを運営している側と闘おうとするだろう。実際、そういう者たちが、最後の方まで生き残っている。
しかし、前回大会勝ち残りの川田が、首輪の外し方を知っていて、恋人を殺された恨みがあるのなら、何故、早くにその知識を皆に知らせて、共闘して権力側と闘おうとしなかったのか疑問。船舶の操縦法、在りかまで知っていたのに。
担任のキタノには、BRを行わせる積極的な理由があったので、現場監督を任されるのは理解できる。しかし、個人的な動機が、抽選にも影響しうるのかも。現実的に考えれば、全国の中学校から抽選で選んでいるのなら、さすがに忖度や賄賂等が横行しそう。普通の教師ならば、このBR法には猛反対するだろうし、命を持って抗議する教師も出そう。すると、選ばれて問題が小さい学級、教育委員会の査定などが影響するだろうから、やばつない話になるだろう。
生徒同士の殺し合い故に、やくざや戦争映画、エイリアン物と違って、身近なあり得る世界なので、生々しく、見るに堪えない映画となっている。より感覚的な所が刺激されて、より暴力度が増すのだ。それで、問題に感じた大人たちが騒いで、国会でも取り上げられたのだろう。
この映画に、より積極的な意味を見出すとしたら、平和な世界に埋没せずに、前に向かって「闘え」ということだろうか。本来は、生存競争のために闘う本能が備わっているはずの人間なのだが、闘うことを忘れた、或いは闘うことを忘れさせられ、去勢された人間に対しての強いメッセージ性があるということだろうか。
自分的には、あまりお勧めできない映画。