「深作欣二監督の思いが迸る、異色の傑作映画」バトル・ロワイアル Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
深作欣二監督の思いが迸る、異色の傑作映画
深作欣二 監督(1930生まれ)による2000年製作(113分/R15+)の日本映画。
原題:Battle Royale、配給:東映、劇場公開日:2000年12月16日。
「仁義なき戰い」シリーズに「蓮田行進曲」と、深作監督は大好きな監督の一人である。とは言え、初回視聴では扱った題材の特殊性にかなり戸惑った部分もあった。しかしながら、2度目の視聴では、『共闘して理不尽な権力と闘え!』という監督の熱いメッセージ性を感じて、深い感動を覚えた。尚,原作小説は読んでいない。
中学生同士に殺し合いをさせる政府という設定に、互いに密告しあう住民社会を形成した大日本帝国の統治方法をイメージさせられた。中学生たちは、知恵も力も乏しい市井の一般的な人間達の象徴かもしれない。政府の誘導で、友達同士だったはずなのに、いとも簡単に、互いに攻撃し合う子供達。灯台での、事故的な死亡をきっかけとする銃乱射による女生徒たちの殺し合い描写が、何とも痛ましく凄まじい。権力に対峙する知力に乏しく信じる能力も欠いた連帯には、死しかないのか。
政府のイメージ通りに1匹狼で闘う優等生!?、転校生桐山和雄こと安藤政信(当時25歳)、相馬光子こと柴咲コウ(当時10代)の殺戮描写が凄まじい。セリフは一才無く、問答無用に機関銃で生徒達を殺戮しまくる安藤の姿は実に強烈であった。そしてそれ以上に、切れ味の良さそうなカマを武器に次々と同級生を殺していく美しい殺人鬼柴咲に圧倒された。獲物?を見つけたときのニヤッという恐くて怪しい笑みが、頭にこびりついて離れない。
瀬戸、飯島と協力して、政府側コンピューターをハッキングし更に爆弾も作って権力に対抗しようとした三村信史演ずる塚本高史(映画初出演とか)も、知力と3人の協力体勢で最後の方まで生き残り、印象的であった。残念ながら、狂信者の安藤政信にやられてしまうが、権力有する敵を倒すことのみに集中しすぎた報いということなのか?悲しい結末であった。
七原秋也(藤原竜也)と中川典子(前田亜季)の主役2人に渡された武器が、「鍋の蓋」と「双眼鏡」というのも、一般市民の持てるもの、即ち自分を守る術と積極的情報収集を象徴している様で、興味深かった。彼らは、強力な武器を持つ川田章吾こと山本太郎(当時25歳)と共にいることで、最後まで生き残る。首輪の外し方も事前にコンピューターに侵入して知っていて、最後の一人となったと政府側を騙す準主役の山本、とても魅力的な俳優であったことを、初めて知った。
主役2人も、とても素敵であった。最後、法に反して二人共生き残った結果、全国指名手配になった2人が渋谷駅前で走る姿で映画は終わるが、その前の藤原竜也の表情がバトル・ロワイアルを通じて一皮剥けた様な大人びた表情で、10代ながら流石藤原達也と唸らされた。
彼の独白「今俺たちはお互いに武器を持っている。いつか、それをまた使う時が来るとして、俺たちはやっぱり迷いつづけるのだろう。それでも俺たちは今よりもっと前に進まなければいけない。何処まででもいい、精一杯走れ」。そして画面に赤い大きな『走れ』の文字、そしてギターのコード音。深作監督にとっては、現政府も闘う相手ということか。カッコイイ演出だ、そして熱さを感じた!
ヒロイン役前田亜季は、どういう存在だったのか?あのバトルの中で、山本太郎と二人きりの状態で、他人の善意を信じ切って寝入っている美少女。監督の分身であろうタケシがバトル中も特別扱いして見守り、深く愛している様な存在。そう、この映画では、中学生に仮託して、様々な大人の男女の恋愛模様が盛り込められた様にも思えた。その中でも、銃を所持しながら水鉄砲発砲で自らを命をも犠牲にして、前田亜季の命を救ったタケシの姿に、深作監督の自身の愛人に対する、あられも無い深い純愛が込められていると思ってしまった。
監督深作欣二、原作高見広春、脚本深作健太、製作総指揮高野育郎、企画佐藤雅夫、岡田真澄、鎌谷照夫、香山哲、プロデューサー片岡公生、小林千恵 、深作健太 、鍋島壽夫、協力プロデューサー麓一志 、富山和弘 、加藤哲朗 、大野誠一 、松橋真三 、竹本克明、撮影柳島克己、照明小野晃、録音安藤邦男、美術部谷京子、装飾平井浩一、衣装江橋綾子、特殊メイク
松井祐一、劇中画北野武、VFXスーパーバイザー大屋哲男 、道木伸隆、編集阿部浩英、音響効果柴崎憲治、音楽天野正道、音楽プロデューサー山木泰人、主題歌Dragon Ash、アシスタントプロデューサー小林勝江 、藤田大、製作担当田中敏雄、監督補原田徹、スクリプター牧野千恵子、スチール原田大三郎 、加藤義一。
出題
七原秋也藤原竜也、中川典子前田亜季、キタノ北野武、川田章吾山本太郎、桐山和雄安藤政信、相馬光子柴咲コウ、千草貴子栗山千明、三村信史塚本高史、杉村弘樹高岡奏輔、国信慶時小谷幸弘、内海幸枝石川絵里、野田聡美神谷涼、琴弾加代子三村恭代、瀬戸豊島田豊、飯島敬太松沢蓮、新井田和志本田博仁、元渕恭一新田亮、江藤恵池田早矢加、清水比呂乃永田杏奈、北村雪子金澤祐香利、日下友美子加藤操、榊祐子日向瞳、谷沢はるか石井里弥、松井知里金井愛砂美、中川有香花村怜美、沼井充柴田陽亮、笹川竜平郷志郎、黒長博増田裕生、
月岡彰広川茂樹、金井泉三原珠紀、小川さくら嶋木智実、山本和彦佐野泰臣、赤松義生日下慎、大木立道豪起、織田敏憲山口森広、倉元洋二大西修、旗上忠勝横道智、滝口優一郎内藤淳一、稲田瑞穂木下統耶子、南佳織関口まい、矢作好美馬場喬子、天堂真弓野見山晴可、藤吉文世井上亜紀、前回優勝者の少女岩村愛、慶子美波、レポーター山村美智、バスガイド深浦加奈子、ビデオのお姉さん宮村優子、安城三尉竜川剛、七原の父谷口高史、林田先生中井出健、スタントイン芦川誠、キタノの娘(声)。