「父娘愛と兄妹愛を掬い上げる人情捜査」はぐれ刑事純情派 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
父娘愛と兄妹愛を掬い上げる人情捜査
DVDで鑑賞。
テレビシリーズは摘み食い程度に視聴済み。
「はぐれ刑事純情派」は亡くなった祖父が大好きだった刑事ドラマで、幼い頃からよく一緒に観ていた。全シーズンの主題歌を堀内孝雄氏が担当しており、祖父は主題歌を聴くと名場面が脳裏に蘇ると、折に触れて言うほどであった。そんな「はぐれ刑事純情派」に劇場版があると知り、祖父の想い出と面影を感じたくてDVDを購入し、観てみることにした。
ストーリーに映画にするほどのスケール感は無かったし、テレビシリーズからの変化も分からなかった。いつも通りの「はぐれ刑事純情派」だった。しかしこれでいいのだと思う。
映画だからと気負わない。世界観を壊さず、安浦刑事の人情捜査を描き切る(予告編には安浦刑事が拳銃を構えるシーンがあったが本編には無く、客寄せのためのダミーだった)。
チンピラの殺害事件が、次第に安浦刑事の身辺を巻き込んだ重大な事態へと発展していく展開はとても面白かった。
その事態を引き起こす大沢は、声が大きくてかなりうるさいが憎めないキャラクターで、妹を想う優しさが胸に沁みた。
大沢の妹も非常に兄想いだ。お互いを想い合う兄妹愛が事態をこじらせていく。身内の情がドラマに深みを齎していた。
そんな大沢がひょんなことから、安浦刑事の娘エリに惚れてしまう。大沢への対応に手を焼く安浦刑事が面白かった。
娘の幸せを願うあまり、エリとの結婚を申し込む大沢の扱いに苦慮し、少々邪険にしてしまうところがとても人間臭い。
父娘の愛と兄妹の情を掬い上げる安浦刑事の人情味溢れる態度が終始一貫していて、心が暖かいもので満たされた。
最近では、テレビシリーズは滅多に地上波で再放送されなくなっているが、今回本作を観て、祖父と一緒に観ていた頃のことを思い出して、とても懐かしかった。観て良かった。
[余談]
安浦刑事の捜査スタイルへのカウンター役で、刑事としてはかなり器の小さい水城警部が配されていた。無駄にプライドが高く、偏見の塊のような水城を演じる村井國夫氏の演技が絶品で、巧みな役作りの術中に嵌り、終始イライラさせられた。