「【“輪廻と無常。”結婚の価値観を見出せない娘と、そんな彼女に結婚して欲しいと願う家族の姿を優しき視点で描いた作品。相手を思いやる日本人の品性高き、気質が横溢している作品でもある。】」麦秋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“輪廻と無常。”結婚の価値観を見出せない娘と、そんな彼女に結婚して欲しいと願う家族の姿を優しき視点で描いた作品。相手を思いやる日本人の品性高き、気質が横溢している作品でもある。】
ー 今作を鑑賞前に石井妙子著の「原節子の真実」を読んだ。
そこに記されていたのは、原節子さんが、今作を含めた”紀子”三部作を好んで演じた訳ではなかった事が記されている。
どこまでが真実であるかは今や分からないが、勝手な推測であるが、原節子さんは旧弊の”女性は30歳前に結婚するべき”という考えに反発していたのではないか、と類するシーンが多数描かれている。
実際、原節子さんは終生、独身を貫かれている。-
◆感想
・”輪廻と無常”とは、今作の監督である、小津安二郎さんが今作のテーマとして掲げたモノだそうである。可なり深いテーマである。
■北鎌倉に暮らす間宮家は、周吉(菅井一郎)と妻の志げ(東山千栄子)、長男・康一(笠智衆)夫婦とその子供2人、そして長女・紀子の大所帯。
ある時、紀子の上司である佐竹が、まだ独身の彼女に縁談を持ちかける。
周吉夫婦も康一夫婦も乗り気になり、紀子もまんざらではない様子なのだが…。
◆感想
・今作は、結婚が全てではないと思っている紀子(原節子)と彼女の結婚を願う家族の姿が、コミカル要素を交えて描かれている。
ー だが、紀子は未だ28歳である。時の流れを感じる。終生、独身を貫いた原節子さんが
今作を気にいっていなかった事が、何となく分かる気がする。
原節子さんの先進的な想いが伝わって来る気がする。-
・ゴシップは好きではないが、当時原節子さんと小津安二郎さんの恋も噂として流れたそうである。
<だが、今作はそんな下世話な事を考えずに、一人一人の家族の一員が、如何に家族の幸せを考え、思考し行動する姿を描いている姿を、素直に見たい作品である。
そこには、相手を思いやる日本人の気質が横溢しているからである。
家族のそれぞれが自分なりの考えを持ち、複雑な人間関係を織りなす様を細やかに捉えている作品でもある。>