「大林宣彦監督の描きたかったこと」廃市 星組さんの映画レビュー(感想・評価)
大林宣彦監督の描きたかったこと
1959年に発表された福永武彦の短編小説を
34年後、大林監督が情緒豊かに描いた作品。
低予算、16mmフイルム、2週間弱の撮影、
プロによる自主映画とでもいいますか、
緩やかな映像、耳に残る音の数々、
光の置き方、自身によるナレーション、
監督の描きたい映画なのだとわかる。
水も川も風も草木も美しいところ、
しかし愛ですら動かない町に
ここは死んだ町なのだと
住人の誰もが諦める。
映画は美しい水の町の
ひと夏に起こった
誰も気にもとめない
小さな水紋のような物語
消え去ろうとしている物語を
とても丁寧に綴っている。
大林宣彦監督が何十年も切望し
商業映画ではなく低予算の映画として制作。
丹念に人の心を描いた作品であり
全編を通して映画愛を感じる作品である。
大林宣彦という映画人
その証となる作品。
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