「剣とは人殺し。それ以上のものではない!」眠狂四郎 勝負 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
剣とは人殺し。それ以上のものではない!
WOWOWの市川雷蔵没後50年「眠狂四郎」全12作品一挙放送…で観賞。
シリーズ第2作。
監督は三隅研次に代わっている。
前作「殺法帳」ほど様式美に拘ってはいないが、
狂四郎を待つ5人の浪人刺客を「朝比奈(勘定奉行)は俺が斬らさん」と声だけで翻弄する場面、霧に包まれた闇夜に象徴的な小道具をわずかに配置して舞台劇のような印象をもたらす。
唯一、神秘的で芸術的なシーンだ。
この5人の刺客が順に狂四郎に襲いかかってくる物語構成で、手裏剣あり、槍あり、それぞれの対決場面に工夫があって活劇性を高めている。
円月殺法の弱点は、円を描く剣が上に来るとき袖で狂四郎の視界が遮られる一瞬にある…
槍使いがその一瞬に突き込むが、あっさり斬られる。
クライマックスでは、白鳥主膳配下の大群との死闘、そして最後の刺客との一騎打ちとなる。
ここで敵は、円を描ききるまで斬り込まないことで円月殺法に対抗するが、やはり奇策は狂四郎には通じない。
…決闘ものなら、敵の策に苦戦を強いられながらも更に上をいく策で勝つ…という展開に期待するのだが、敵が円月殺法の弱点を探るところは良いものの、なぜ敵の策が成功しないのかが分からない。
そもそも、2作目にして円月殺法の強さの秘密がまだ不明なのだ。
活劇度は上がったものの、艶っぽさは弱まった。
というか、狂四郎はお節介で勘定奉行・朝比奈老人(加藤嘉)を守る優しい男になっている。
狂四郎を取り巻く女は、そば屋の娘(高田美和)、占い師に扮した刺客の采女(藤村志保)、敵方の象徴である高姫(久保菜穂子)の3人。
そば屋の娘の気持ちは、おぼこむすめのほのかな憧れに過ぎない。
采女には囚われた異人の夫を救う目的があるため、狂四郎への想いは封印しなければならない。
高姫だけは遠慮なしだが、狂四郎からブタ扱いされる。
色っぽい会話が出る設定ではないのだ。
一大決戦を終えた狂四郎に仕官を勧める朝比奈老人が、去っていく狂四郎に「きょおしろおぉぉ〜」と呼び続ける場面は、「シェーン、カンバーック!」…的な?
しばし見つめ合い、何も言えない采女に夫が既に死んでいることを告げもせず狂四郎は無言で通りすぎる。
去っていく狂四郎を目で追うこともなく佇む采女は、やがて静かに崩れ落ちる。
情感あるラストシーンで、完。