「髷にさしたる房楊枝 浴衣の裾をかいどりて 髪結い新三は いい男」人情紙風船 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
髷にさしたる房楊枝 浴衣の裾をかいどりて 髪結い新三は いい男
上に書いたのは小唄「髪結新三」の歌詞(後半)です。歌舞伎の「髪結新三」は二枚目が演じるが悪い奴なので自分にとっては嫌な男。でもこの映画の新三は小唄の通りのいい男で目に青葉の爽やかな風、ちょっとした仕草が粋で見惚れた。
金魚売り、羅宇交換するキセル売り、二八そば、質屋の一人娘と恋仲の手代、番頭に丁稚、質屋にまげようとする髪結い道具、下駄の鼻緒のすげ替え、傘の貸し借り、駕籠と、脳内の落語世界がそのまま目の前に現れた。浪人又十郎と妻の矜持と無念を、貧乏長屋のドブに落ちたひとつの紙風船で描く。見る側の想像に任せる引き算の映像は細部まで記憶に残り何度でも思い起こせる。
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