「勝手に死ぬな」日本のいちばん長い日(1967) LaStradaさんの映画レビュー(感想・評価)
勝手に死ぬな
【日本のいちばん長い日】 岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その7
丁度79年前の8月14日、国民の知らぬ間に進んでいた敗戦の詔勅と玉音放送を巡る軍人と政治家の断末魔を描いた記念碑的名作です。小学校3~4年生で公開時に父親に連れられて観て以来の鑑賞となりました。おそらく、父親は「分かっても分からなくても息子に観せておきたい」と思ったのではないでしょうか。子供心にも、切羽詰まった熱気が満ちているのは感じられ、特に、日本刀で人を切ると噴水の様に血が噴き出す描写に驚き、帰ってからもそれが怖くて怖くて仕方なかったのをよく覚えています。モノクロ映像がその熱気を更に高め、薄紙一枚を差し挿む隙も無い程、全編緊張感に満ちた157分でした。脚本も監督も俳優も漲る熱量が半端ありません。
それにしても、と思います。既に日本がポツダム宣言を受諾する事を知りながら、特攻隊の出撃を命じた司令官が居たのです。戦後、その人は一体どんな言い訳をしたのでしょう。聞きたいな。そして、敗戦と共に割腹自殺して行った人々。責任を感じるのならば、「何があったのか」「どこで間違ったのか」「何故間違ったのか」「どうすればよかったのか」を後世の人間に伝える義務があった筈です。それなのに逃げるなんて卑怯だよな。
そして、本作中で二度、何の説明もなく倉田百三の『出家とその弟子』の岩波文庫が映し出されるシーンが2度ありました。僕も高校生の頃読みましたが、戦時下にあってあの本がどう読まれていたのか何か言葉が欲しかったです。
そして、本イベントの呼び物、上映後トーク、今回は春日太一さんによるタップリのお話でした。本作をも「戦争の中で置き去りにされた人々」と見る視点にはなるほど。そして、春日さんの最新刊で、本作の脚本をも担当した橋本忍さんの評伝「鬼の筆」にサインを頂き、大満足。