「日本の命運が決した壮絶な二十四時間」日本のいちばん長い日(1967) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の命運が決した壮絶な二十四時間
東宝8.15シリーズ第1作。
マガジンの付録DVDで2回目の鑑賞。
原作は未読(※現在は読了済み)。
岡本喜八監督の手腕が冴え渡っている。ドキュメンタリーみたくリアリティーに溢れながら、タイムリミット・サスペンスならではなハラハラドキドキをも感じさせる演出が巧みだ。
三船敏郎氏他、東宝所属俳優たちが軒並み出演しオールスターの貫禄を放っている。彼らの重厚で情感たっぷりな演技が本作のリアリティーを底上げしており、心揺さぶられた。
場所や人物名などのテロップ、会議シーンを映し出すアングルなど、「シン・ゴジラ」で模倣されていた部分を確認出来たことが、特撮ファンとしては大変嬉しかった。
初めて鑑賞したのは2、3年前のことだが、その時まで本作で描かれている出来事があったことを全く知らなかった。
国の命運が決しようとしているその裏で幾人もの想いが交錯し、狂騒の中で血が流されていたのかと強い衝撃を受けた。
よくよく考えれば、すぐに受け止められないのも当然だとも思った。これまでの体制が崩れ去ってしまうのだから。
無条件降伏を良しとしない陸軍青年将校たちの暴発。宮城占拠及び玉音盤の奪取と云う暴挙。最後の足掻きとばかりに暴走する彼らの姿が痛々しく、そしてとても物悲しかった。
畑中少佐役の黒沢年男氏が名演である。彼から迸る熱情と狂気。目をガッ…と見開いて、汗まみれになりながら決起を促す姿が鬼気迫っており、その人間的迫力に圧倒された。
他の俳優たちを食う存在感と勢いがあり、本作が名作たる一助となっているのは間違いない。宮城に向かってピストル自殺する時の表情と死に様も壮絶。凄まじい余韻が漂う。
日本の敗北は火を見るより明らか。本土決戦に持ち込んだところで状況が好転するとは思えない。竹槍でB‐29が落とせるわけが無いし、精神論で大軍勢と火力に敵うはずも無い。
日露戦争でロシア帝国に勝利した国と同じ国とは信じられない為体である。陸軍は政治に走り過ぎてしまって、外に目が向かなくなってしまっていたと云うことなのかもしれない。
ラストに示される犠牲者の数と、惨状を記録した写真。我々が享受する今日の平和は尊い犠牲の元に成り立っていることを決して忘れてはならないと云う想いを新たにした。
悲劇を繰り返してはならない。その一念だけは揺らいではならない。痛ましい経験をした民族だからこそ訴えられることがあるはずだと、胸に刻んでおかねばならないと思う。
[以降の鑑賞記録]
2020/08/14:Blu-ray
2023/08/16:Blu-ray
2024/08/14:Blu-ray
2025/08/15:Blu-ray
※修正(2025/08/15)
コメントありがとうございます。
4Kでご覧になられたんですね! 羨ましいです…(笑)
こういうときに限って仕事の忙しさを呪いたくなります(笑)
仰る通り、多くの人に観て欲しい名作中の名作だと思います。周辺情勢がきな臭い今の時期は特に…。
syu-32さんへ
その4Kで観てきました。ところどころにボカシが入るのはご愛嬌w
史上最重量級の再現ドラマ。イデオロギーを捨てて多くの方に観て欲しい作品でした!