「「軍隊は命令で動くものだ」」日本のいちばん長い日(1967) いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「軍隊は命令で動くものだ」
物心ついて、燻し銀の演技力をみせつけていた素晴らしい俳優達の、未だ自分が生まれる前の脂が乗っている時代に堂々たる活躍をスクリーン一杯に披露していた作品である。
主にポツダム宣言を受容れるまでのアバンタイトルの長さに驚き、確かに長い話になりそうな雰囲気である。そして玉音放送までの詔書作成と、宮城事件、鈴木首相宅焼き討ち、厚木航空隊事件、児玉航空基地での特攻隊出撃シーン等を絡めつつ8月14日から15日正午までの短時間を大変濃縮した空間として描いた構成である。
充分有名な作品であり、ちょくちょくラジオのパーソナリティのネタのきっかけにもなる作品だったので、きちんと観てみようと思った次第である。
この手の内容に常に思うことは、軍人という種類の人間の馬鹿馬鹿しさである。始終四白眼で演技していた将校の鬼気迫るシーンを目の当たりにするだけでなく、期限が設定された途端、右往左往する軍人達の愚かさを表現しているにつけ、本当に戦争の愚かさを改めて身に沁みてくる。そして憤怒の想いで、こんな連中に国を舵取りさせていたのかとやるせなさと無力感に苛まれる。結局エリートなんてものは国の事を考えずに自分本位が本音でありその組織の保守のためならばどんな犠牲も厭わない悪魔なのだということでしかない。そして何の力も持ち得ていない下々は常にそんな連中の都合に振り回され、命を奪われる。
この作品中の陸軍大臣の潔さに称賛を送っている悪魔達もいるだろうが、決して美しいモノではないことを肝に銘じて欲しい。この作品にでてくる総ての役は市囲の人ではない。その才能を自分だけの利益のために使っているだけの悪魔である。リアリティ演出としての天皇の顔を恣意的に隠す演出等、視覚効果も優れた、反戦映画としての高い評価を自分は送りたい。
そして、また世界中のどこかで常に戦争は続き、死ぬべき人間が生きて、生きるべき人間が死んで行く・・・