劇場公開日 1967年8月3日

「日本のいちばん短い日」日本のいちばん長い日(1967) 肉ネ~ムさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5日本のいちばん短い日

2018年5月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

終戦から22年後の映画とのこと。1967年であればカラーでも撮れそうだが敢えてモノクロにしたのだろうか。
8月14日から15日の出来事については少しだけ知っていたが、陸軍軍人をはじめとして登場人物が「天皇」と言ったり「天皇陛下」と言ったりする。考証としてはどうなのだろう。大幅な脚色はしていなさそうな印象ではあったが。

さてこの24時間が、日本のいちばん濃い日だったことは間違いないかもしれないが、当事者にとってはむしろ、いちばん短い日だったのではないかとも思える。それほど濃密な日だったことはひしひしと伝わってきた。この臨場感はやはり書籍だけからだと難しく、まさに映画の真骨頂だと思う。

一見無駄とも思える言葉選びに紛糾する会議に、意思決定の遅さや手続きの冗長さなどマイナス面の印象を持つ人も多いだろうが、騒乱にもかかわらず終戦決定からわずか一日で玉音放送まで無事こぎつけることができたのはむしろ驚異的な迅速さですらある。もう少し遅かったら北海道だけ東側の国になっていても不思議ではなかったのだから、結果的にはあの時点ではベストシナリオで推移したと言えるのではないか。戦後日本の命運を左右するまさに岐路の一日だったわけだ。

なんでもっと早く降伏しなかったのかと安直に思っていた時期もある。
だが戦争をやめるのがいかに難しいかということを改めて認識させる作品である。

誤解を恐れずに言うと、正直なところこれほど登場人物に共感できなかった作品も珍しい。今を生きる日本人と彼らはまったく別の世界に生きていたとさえ感じられる。にもかかわらずこれだけ見ごたえがあるのは、この作品自体の持つパワーと日本のもっとも濃い日の史実の重みによるのだろう。

君が代が流れたときこみあげてくるものがあった。そのとき、少しだけ彼らと繋がった気がした。

肉ネ~ム