「ちょっとずつの「あれ?」が積み重なって、最終的に全く予期せぬ地点にたどり着く」アメリカン・ビューティー えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとずつの「あれ?」が積み重なって、最終的に全く予期せぬ地点にたどり着く
アメリカにある典型的な家庭が、アメリカ特有の問題によって崩壊していく様を描くブラックコメディ。
アメリカという国は1776年に建国された、他の国の歴史に比べれば、できたてほやほやの国である。だから彼らはいま、「国」というものをつくっている最中である。世界を舞台に躍進を続ける企業群、広大な面積や資源、世界の警察たる軍備、有名な大統領の話題性など、派手で見栄えもするので思い違いをしがちだが、国としてはだいぶ若い。
つくっている最中という状況に加え、多民族国家的な国民性や右も左も包含する広義の愛国心なんかも相まって、色んな問題が起きている。例えば、銃社会、労使の雇用契約、ティーンの性、精神的病理、退役軍人、共依存的な家族形態や人格形成、不倫や離婚問題、DV、同性愛への偏見などである。
そしてそれらの全てが余すところなく、主人公のレスター・バーナム家に降りかかり、家庭が徐々に崩壊していく。登場人物ひとりひとりに絶大な非はないように思えるが、ちょっとずつの「あれ?」が積み重なって、最終的に全く予期せぬ地点にたどり着く展開は、苦笑いでただ見つめるしかないほど、見事である。
今作でアカデミー賞を受賞した主演のケビン・スぺイシーは後年、ゲイ疑惑、セクハラ、小児性愛という極めてアメリカらしい問題で話題を振りまく結果となってしまった。公開から20年、アメリカは未だ建国の途上にある。
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