劇場公開日 1963年11月16日

にっぽん昆虫記のレビュー・感想・評価

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4.0母親の旦那を手玉に取る娘の逞しさ

2021年11月27日
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鑑賞方法:VOD

色仕掛けで母親の旦那を手玉に取り、自分達の畜産創業の資金を得る娘の逞しさ。

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Kazu Ann

3.0タイトルの意味にこそ本作の正体がある

2021年6月4日
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鑑賞方法:VOD

昆虫は冒頭タイトルバックに登場するだけだ
本能のままに生きる登場人物達の行動を昆虫を観察するかのような徹底的にリアルな視線で捉えた映画だから「昆虫記」だというそうだ
本当だろうか?

では、なぜ「にっぽん」が付けられているのか?
なぜひらがなで記されているのか?

劇中、なぜ年月をそこまで正確に明示する必要があるのか?

しかし、それが戦後になると、年月は明示されなくなるのだ

戦後だけニュース映像を挿入することによって、この物語が進行している間、日本には一体何が進行していたのか、それを説明しようとしているのだ
そのことに注目すべきだ

そして終盤には、タクシーが60年安保闘争のデモ隊によって通行が妨げられて、主人公のとめが苛立つシーンがあるのだ

つまり本作は国民を豚になぞらえた1961年の前作「豚と軍艦」と同じ視線と立場で撮られた映画であるということだ

日本の国民全体の運命を大きく変えてしまうような事態が進行しているのにも関わらず、この物語に登場するような人間達は自分達には何の関係も無いことだと、昆虫のように全く別の世界で生きているのだと大衆を見下した立場だ

日本国民の為と信じて、社会主義活動に邁進して、60年安保闘争にはあのように激烈なまでに政治闘争に明け暮れたにもかかわらず、日本国民の大部分はこのような人間達ばかりだったのだと見下しているのだ

それはまるで人間社会とは無関係な、ただただ本能のままに生きる昆虫の社会のように別個に在るのだ
それが「昆虫記」の意味だ

だからタイトルは「にっぽん昆虫記」なのだ
こんな国民が過半数を占める日本は日本では無い
認められないから、日本ではない「にっぽん」なのだ

自分達のような左翼運動をしている者だけを人間だと認めている態度なのだ
日米安保を肯定するような、左翼運動に無関心、無関係に生きている日本国民は昆虫であるとみなしている考え方なのだ

政治に無関心な大衆を蔑視しているのだ
社会主義建設に無理解な大衆を見下しているのだ
それが本作の正体だ

このように左翼の人間に多く見られる、大衆を見下して自らを大衆を導くべき存在であると、生意気に思い上がった精神はこの当時から存在していたのだ

いや、それは今村昌平監督やその世代が生み出したものだ
それが拡大再生産されてきて60年も経過した21世紀においてもなお、その大衆を見下す精神構造はビクともしない神殿のようになっているのだ

信子はそんな大衆の中からでも、次の世代には必ずや、社会主義国家建設に向かう人間が現れる筈だという、そのような夢想だ
これこそ空想的な社会主義建設だ

唾棄すべきは、このような大衆を見下す思い上がったエリート思想だ

21世紀の若い世代が、本作を観る値打ち、意味や意義は、この本作の正体とは何かを知ることだ
そこにこそあるのだ

信子が身ごもった子供は、唐沢の子なのか、結婚相手の子なのか分からない
とめの母えんと同じだ

だが、自分には違う意味が込められていたと感じられるのだ
日本に社会主義国家を建設するには、親はソ連でなくてもよいのだ、中国でも、北朝鮮でもいいのだと言っているように見えて仕方ないのだ
そんなこと気にすんなと
21世紀の我々からすれば寒気のする話だ

今日は6月4日
1989年のこの日、天安門広場で大虐殺があった日

このような大衆を見下した思想が、民主制を求めて集まった数千人もの人民を、虫けらのように戦車で踏み潰した日なのだ

大衆を「昆虫」として見ているからできる所行なのだ

本作の公開から26年後に天安門事件は起こった
そして今年はそれから32年が経った

中国は今も天安門事件自体が無かったかのように振る舞っている
「虫けら」を踏み潰した自覚を持っていないのだ
それが大衆を本作の冒頭に映される昆虫になぞらえた思想が行くつくところなのだ

これが本作の正体だ

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あき240

4.0ある女の半生

2021年3月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 とめの母親が村の誰とでも寝る女で、父親は知恵おくれ。彼女が生まれたときから、誰が父親かわからないと笑い者にされていたオープニングから痛々しい。

 製糸工場では組合で活躍していたとめだったが、係長(長門裕之)と関係を持ってしまい、やがて会社をクビになる。

 宗教団体の集まりで知り合った女の楽々という旅館で働くようになったとめ(左)は、そこが売春宿であることに気づいたときにはもう売春させられていた。そこで随分と働かされたが、警察の手入れがあってから商売は沈みがち。こっそり個人的に売春を始めて、仲間を引き連れてコールガールの元締めとなった。

 友だちとなっていたみどり(春川ますみ)とは、アメリカ人との間の娘を預かっているときに死なせてしまう経緯があった。シチューの鍋をひっくり返した娘。なぜかこのシーンが印象的。だが、とめとみどりとの確執がよくわからない・・・その後、自分で鍋に手をつっこむシーンもこの伏線か?

 終盤、上京してきた娘の信子(吉村実子)がとめの客でもあった老人唐沢と愛人関係を結んでしまう。恋人もいるのにこうした関係を結ぶなんて、母子3代に渡る淫蕩な性格のためか。なぜだか、その後は開拓団として恋人と仲睦まじく働いていた。お腹の子もどちらが父親なんだろうな。金銭感覚はしっかりしてるので、やはり老人の子か。

 女の半生を昭和のドキュメントを流しつつ描いた作品。昆虫観察のような視点というテーマのため、主人公たちに感情移入できる内容ではなく、むしろ淫蕩な女たちがしたたかに生き抜き子孫を残す本能のみで生きていることが感じられる。昭和史の映像はオマケにすぎないが、それが逆に昆虫と同じように生きる本能を浮き出しているのだ。しかも女性視点ばかりの映像のため、男は精子を提供するだけの動物にしかすぎないことを訴えてるような気もする。

 決して感動できる映画ではない。むしろ実験的な部分が目立ってしまい、脳裏に焼き付いてしまいそう。エピソードごとの静止画像や、とめの読む短歌。強烈なのは父親に乳を吸わせる左幸子。他に、ちょっとだけ春川ますみの絡み。吉村実子の相手の老人がセックス中に入れ歯がはずれるところか・・・

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kossy

4.0面白く、共感し、胸が苦しくなる。名作。

2020年8月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

学生時代に名画座でみたけど、こんな映画だったけ?
学生の頃はわからなかったんだなあ。

歳をとるってこんなことなのかな?と感じる。

胸が苦しくなる。

最後の若い二人が救いか。

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昔から映画好き

3.5逞しい昆虫

2015年8月14日
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鑑賞方法:映画館

昆虫大好きなおじさんたちがよく言ってました。昆虫は逞しい、自然保護とか「かわいそう」などといって昆虫採集をするなというのは変だ!違うって。昆虫おじさんとは、養老孟司さん、奥村大二郎さん、岡田朝雄さんなどです。

あと、この映画でおっぱいを大人に吸って貰う場面があります。赤ん坊が生まれると母親はおっぱいから乳が出ます(なかなか出なくて困る人もいます)。そしてその乳を吸ってくれる赤ん坊が居ないと、胸がはって岩のように硬くなりとても痛みます。だから吸って貰うと(赤ちゃんに吸ってもらうのが一番ですが)痛みは一気に消えて胸も柔らかくなってほっとします。乳がはる胸の痛みは尋常ではありません。だから父と娘なのでちょっと気持ち悪いですがあの場面は性的なシーンでなくて、痛み軽減のためだけのシーンだと思ってます。以上、授乳教室でした。

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talisman