肉弾(1968)のレビュー・感想・評価
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日本よい国、清い国
【肉弾】 岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その8
昨日は、79年前の8月14日における日本軍の断末魔を見つめた大作「日本のいちばん長い日」が上映され、敗戦の日の今日は一転してたった一人の兵の可笑しくも哀しい8月15日を岡本監督が描いた小品「肉弾」です。
もう歳のせいでどこの誰だったかは記憶もおぼろになりましたが、10年以上前、「美しい国へ」なんて本を出す政治家が現われました。僕は日本が大好きですが、政治家がそんな事を言い出すと咄嗟に身構えてしまいます。それは、本作で子供が朗読する場面が度々登場する戦前の修身の
「日本よい国、清い国」
を想起してしまうからです。この一文は更にこう続きます。
「世界に一つの神の国。
日本よい国、強い国。世界に輝く偉い国」
「美しい国」なんて今更言い出した政治家の頭の中には「神の国」「強い国」があったと思えてなりません。政治家がそんな言葉を口にする事で、ある年代以上の人々にあの息苦しい時代を想起させるという想像力が全く欠如していたのです。敗戦の日には黙祷を捧げつつ、あの愚かさを笑える余裕も持ち続けたいと思うのでした。岡本監督の様に。
そして、今日の上映後トークは、監督の奥さんでありプロデューサーでもあった岡本みね子さんと、映画評論家の白井佳夫さんでした。お二人とも直接のお話を滅多に聴けない貴重な機会です。特に、白井さんはこれまで文章を通じては度々接して来ましたが、直接拝見するのは初めて。お二人の掛け合いが面白かったなぁ。
今ではシュール
昭和20年、魚雷にくくりつつけられたドラム缶のなかで海を漂流する21歳の兵士。落ちこぼれ士官候補生だった彼は、家畜のように扱われていたが特攻の命令で神とされる。一日だけの外出で少女と出会い好意を抱くも。
当時の笑いは現代ではイマイチだけど、シュールな笑いがあります。終戦から20年以上たって、ずいぶん世の中お茶らけたんだな、という皮肉が込められた反戦映画。
戦争により、昭和20年の男の平均寿命は46.9歳とのこと。
爆発音や電子音が、ウルトラマンで聞きなれた音で懐かしい。
大谷直子が当時高校生。当時は、あんなことまでやらせてよかったんだ。
戦争の愚かさを綴るのにあの描き方は違うような気がする。 笑いの要素...
戦争の愚かさを綴るのにあの描き方は違うような気がする。
笑いの要素を入れ過ぎていて、ノリも軽過ぎる。
当時18歳くらいだった大谷直子の瑞々しいヌードだけが見どころか。
青年たちの日本のいちばん長い日
日本のいちばん長い日に大人たちが駈けずり回っていたころ、青年たちは何をしていたのかをコミカルに描いた作品。
全般に流れるほのぼのとした音楽と古本屋や少年たちなどのゆっくりとした時間、うさぎとねずみのさわやかな戯れなどが戦争を煽り立てる大人たちとは違う青年の戦争の日常、感覚を表していると思います。
それでも必死に神になるために覚悟を決めることの滑稽さ、最後はその覚悟すらむなしかったことが分かる言い知れぬ虚無感が表現されています。
ブラックユーモアと皮肉たっぷりで反戦を訴えた傑作
#新文芸坐 さんにて「俳優・寺田農 バイプレーヤーの矜持」と題した特別上映開催中。
本日は#岡本喜八 監督『#肉弾』(1968)を鑑賞。
戦中派の監督が実体験を基に私財を投じてATG(日本アート・シアター・ギルド)で映画化。ブラックユーモアと皮肉たっぷりで反戦を訴えた傑作。
#田中邦衛 さん、#笠智衆 さん、#高橋悦史 さん、#伊藤雄之助 さん、#天本英世 さん、ナレーターは #仲代達矢 さんと喜八組常連が揃い超豪華。
#大谷直子 さんの瑞々しい演技も良いですね。
そのなかでも#寺田農 さんの演じた「あいつ」の常軌を逸した演技は日本映画史に残りますね。
ご冥福をお祈りいたします。
(x²+x)+24=(y-12)カッコカッコカッコ…ここまでしか聞きとれませんでした。愚かなる“神の国”。衝撃のラストシーンが忘れられません。
また本筋から外れたことやってるし。
これね、ネットの力まで借りて調べようとしたんですが、当然挙がっていませんでした。完全ギブアップです。
多分、バブル期真っただ中のテレビ放映が初見だったと思うです。
あの頃ってなーんでも放映してくれていたから良き時代だったなぁ。
強烈すぎるラストシーンのインパクトが、今になっても忘れられずの再鑑賞です。
課金までしてコレを観るための大きな動機があったはずなんですが、コロっと忘れてしまいました。
(本当に何だったんだろう?)
まぁいいか。
作中でね、古本屋の“観音さま”を、日本一おばあちゃんが似合う女優・北林谷栄さんが演じていらっしゃったじゃないですか。
一方のおじいちゃんは、これまた日本一おじちゃんが似合う俳優こと、笠智衆さんだったし。
後半の相棒を務める少年は、これまた日本一子役が似合う雷門ケン坊だったり。
肝心主役の寺田農さんはといえば、日本一ムスカの声の似合う俳優だったり(笑)
Wiki調べだとね、日本一死神が似合う(笑)天本英世さんもご出演だったのですね。どこだか気がつきませんでした。
(故人が多いので、敬称の有無が混在して書きにくい!)
この作品で語られる主人公の一人称の“あいつ”。その意味を探ろうと観ていました。
これ、多分、自分から見た自分への言葉ですよね。大いなる自虐を込めた。
もしそうなら、この映画は死後から俯瞰で見た、愚かなる自分の戦争物語だったんだろうなぁ、と思えて。
自分をこんな愚者にしてしまった、愚かな国への痛烈な皮肉だったと思えて。
たびたび叫ばれる「バカヤロー!」はもちろん、愚かなる戦いを続けた“神の国”に対してのことは明らかであり。
そんな愚かな国に生まれてしまった自らの不幸を呪う物語だったと思えて。
えっ、違います?
肉弾=弾丸の代わりとして敵陣に突入すること。
そんな犬死さえさせてもらえなかった哀しい男のとても悲しい物語だと思いました。
マンドリン?の音色のメインテーマも、大変美しく印象深かったです。
実を言うと、物語そのものについては、牛みたいに反芻&消化きないでいるのですが、ラストシーンのインパクトで、この採点になりました。←豚かよ!あいつ(私)は!
時を経るごとに評価が高くなっている
戦後23年目、岡本喜八が脚本監督をつとめたガチガチの反戦映画。
昭和40〜50年代、テレビも映画も本当に反戦ものが多かったのが記憶にある。家族や友人、大切な人を失う設定が必ずセットされていた。
公開当時においては、本作はまさに ″one of them″ だった。
そういう意味では、むしろ、令和のいまに見ることでノイズなしの感覚が得られるかもしれない。
本作は、
戦中戦後の平均寿命の比較からはじまり、
(ナレーションは仲代達矢!)
衝撃?のラストシーンに至るまで、徹頭徹尾、シニカルな視線で当時の日本を斬って斬って斬りまくっている。
古本屋の夫婦、女郎屋の女学生、幼い兄弟、看護婦たちなど個性豊かで現実離れした登場人物群が、
まるで『オズの魔法使い』のような夢と現実のハザマにある夢幻の世界観を醸し出している。
主人公の寺田農が乗り組む特攻兵器は、デフォルメされている前提で見ても、胸が切なくなる。
人の命が、恐ろしいほど軽い。
ヒロイン役の大谷直子は、NHK朝ドラ『信子とおばあちゃん』でブレークする1年前に、本作で体当たりの演技を見せている。可憐だ。
全体を通して、モノクロで製作した効果もキチンとでており、後になればなるほど、評価を高める一作だと思う。
寺田農さんを偲んで
寺田農さん
2024年3月14日肺がんのため81歳で他界
監督と脚本は『殺人狂時代』『日本のいちばん長い日』『座頭市と用心棒』『ダイナマイトどんどん』『ジャズ大名』『大誘拐』『助太刀助六』の岡本喜八
1968年の作品
あえて白黒映画
終戦間近終戦後の二等兵の青春コメディ
戦争映画だが戦闘シーンはない
映画会社から予算をもらえず自主制作で完成させた
粗筋
21歳6ヶ月のあいつ
本来なら大学生だった
もっと勉強しておけば良かったと後悔していた
陸地で様々な人との出会い
昭和20年夏に和傘を被り魚雷付きのドラム缶の中に入り海を漂うあいつは終戦を知らない
漂流の末に東京湾に
屎尿を運ぶ船の船長に発見されたあいつは終戦を知らされる
ロープで繋いでもらい東京の港に運ばれる途中でロープは切れた
時はたち昭和43年夏の海水浴で賑わう海でいまだ漂うドラム缶の中には白骨化したあいつがいた
魂はなお叫んでいた
寺田農の初主演作
当時25歳くらい
声まで若い
全裸の大谷直子
11PMの温泉レポーターうさぎちゃんの由来だろうか
それにしてもあれはなぜうさぎちゃんなのか未だにわからない
下北沢の学生劇に出てくるような理屈っぽい黒い看護師3人組がキャラ的に一番好き
うまく表現できないがなぜか全体的に飄々としている
BGMも夏の島の木陰でハンモックに揺られてる感じでのんびりしている
戦争となれば映画鑑賞どころじゃなくそれ故に自分は戦争は嫌いだが反戦映画という言葉を好まない
戦争映画で充分
わざわざ反戦などとメッセージを掲げるとパヨク臭くて良くない
配役
自称ねずみの特攻隊のあいつに寺田農
両親と兄を戦争で亡くした女郎屋の若きカミさんで因数分解を解いていたおさげのセーラー服の少女「うさぎ」に大谷直子
あいつの父に天本英世
学校長閣下に今福正雄
B29の爆撃のせいで両腕がない古本屋のオジイサンに笠智衆
観音様のような古本屋のオバアサンに北林谷栄
女郎屋の前掛のオバサンに春川ますみ
雨のなかで出会う軍曹に小沢昭一
軍曹のカミサンに菅井きん
漁業組合の飯炊きをしていたがアメリカ兵の妾にされるのが嫌であいつの拳銃で自殺を図るも失敗するモンペのオバサンに三戸部スエ
浜辺で出会う少年に雷門ケン坊
少年の兄に頭師佳孝
竹刀で少年の兄を叩く教師に園田裕久
あいつらを怒鳴る区隊長に田中邦衛
女郎屋の行き先を聞かれる憲兵に中谷一郎
ひげの下士官に高橋悦史
あいつを助けるオワイ船の船長に伊藤雄之助
ナレーターに仲代達矢
主人公の寺田豊の唐突な感じがとてもコミカル
監督・脚本の岡本喜八の動員学徒、幹部候補生の実体験がもとになった戦争映画という。
といっても戦争のシーンはなく、陸軍の理不尽な扱いや本土決戦に向けての特攻隊の訓練、出陣前の兵隊の様子などを断片的に描いている。
若い女性(大谷直子)との淡い恋心も出てくる。
主人公の寺田豊の唐突な感じがとてもコミカル。自分を失わないものの、特攻への訓練にがむしゃらに取り組む。
皇国日本。その結果、主人公はどこに向うのか。
オムニバス的でニヤリするところもある。多くの若者を死にやる戦争の愚かさ。それをストレートに表現する訳ではないが、今の時代から見ると、主人公の真剣さが逆に可笑しくもみえる。
この時代の映画からは、俳優の生々しい迫力が伝わってくる。かっこよく見せるというのではなく、さらけ出しているから迫力がある。
@広島市映像文化ライブラリー
人生で一番心に残る邦画
17歳で見て以来、私にとってこれを越える邦画はない。
大谷直子さんのデビュー作品。大谷さんも撮影時は17歳。とても綺麗でした。
子どもたちにも勧めたけれど、「よかったけど、お父さん程は感動しなかったかなあ」と言われた。
追記
寺田農さんが亡くなられたそうです。大変ショックを受けています。
自分にとって、この映画がどんなに大切な映画か伝えなかったことをとても後悔しています。
ご冥福をお祈りいたします。
日本人は76年も経って何世代も変わっても、結局同じ、変わりないようです そんなペーソスを噛み締める映画です
世紀の名作「日本のいちばん長い日」のエピローグのような作品です
本土決戦を軍部がいくら呼号してみても、実態はこんなものだったというものです
近代的な装備、潤沢な兵力と補給で迫ってくる米軍を迎え討とうにも、もはや肉体を爆弾とするしかない
それが「肉弾」という意味です
つまり「日本のいちばん長い日」と表裏一体をなしています
セットで鑑賞されるとよろしいかと思います
悲愴をもはや突き抜けて、ペーソスの段階でしかないとコメディタッチで本土決戦の準備に勤しむ学徒動員された大学生の主人公を描いています
ちょうど東京で「日本のいちばん長い日」での緊迫した終戦工作が行われている数日間のことです
映画会社の資金をひきだせず、事実上の自主制作のプライベート映画の趣です
しかし見応えがあり印象に強く残る映画だと思います
コロナ禍で、オリンピックの開催が危ぶまれています
何が何でも開催するのだと、戦争中の軍部のようなことを主張する人々がいます
中止すべきとか言おうものなら非国民と言われそうです
でも感染状況はどうか
緊急事態宣言は延長を繰り返し、その地域も拡大していくばかり
頼みのワクチンの接種はそれを巡って大騒動
まるで本作のような有り様です
主人公のあいつのように、悲愴にならずおかしみを持って生きて行くほかないようです
日本人は76年も経って何世代も変わっても、結局同じ
変わりないようです
そんなペーソスを噛み締める映画です
いやー知りませんでした。 悲惨さ、むごさを見せつける反戦映画は数あ...
いやー知りませんでした。
悲惨さ、むごさを見せつける反戦映画は数あれど、こんなコミカルに、しかししっかりと戦争の無意味さを教えてくれる作品があろうとは。
地獄の黙示録のようなグロが苦手な人もこの映画なら大丈夫。もっと多くの人に見られてしかるべき良作です。
名もなき「あいつ」が主人公の何かよくわからぬ展開なのですが、なぜか不思議と引き込まれてしまいます。女郎部屋の話が効いてるからかな。もちろん大谷直子のセクシーショットも。こころなしか土屋太鳳に似てる気がします(笑)
嘘、嘘、嘘
トラウマ映画かな。昔、見たような気がする。素っ裸で走る大谷直子が衝撃だったのかな。
実際に大戦の経験談を聞くと、今と変わらぬ日常と戦争の異常な状況が同居しているもんだが、この映画はまさしくそれ。そして嘘で塗り固められた建前がのさばり、それを痛烈に揶揄する。正直言って笑えなかった。闇が大きすぎる。日本で一番長い日で、監督は当時の政権にあった人物をこき下ろす意図は感じられなかった。では、あいつをこういった目に遭わせたのは誰か?あいつは建前の嘘を看破していたが、建前が支配する社会を覆す方法は知らなかった。上も下も覆せない日本人自らが自らに覆った蓋。覆す術はない。そういう民族性を哀しく伝えようとしている。ドラム缶に乗って。
これぞ映画。
引き込まれた~。のめり込んだ~。
なんだろ?一つ一つの場面が新鮮だ。一兵の戦争への道を純粋な気持ちと葛藤と未来への希望をコミカルに作られてる。コミカルゆえに悲しい出来事の場面もせつなく画かれていてのめり込んで観てしまった。この作品を観て物に溢れた今の時代より当時の時代の方が人間生き生き出来るような気がしました。当時は戦争で貧困と死への恐怖の時代だがなんか人間の希望や知恵、生きると言う価値観を体全体で感じてる気がして羨ましいと思いました。もちろん戦争はいけない事ではあるが平和が当たり前のような現代もいけないような気がしました。この映画はそう言う気持ちにさせてくれる映画でした。後当時高校生だった大谷直子さんの体を張った演技は圧巻でした。無論寺田農さんの演技も良かったです。
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