「遺跡の影の一つ一つには、大勢の人の命運が隠れている」敦煌 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
遺跡の影の一つ一つには、大勢の人の命運が隠れている
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総合:85点
ストーリー: 90
キャスト: 85
演出: 85
ビジュアル: 85
音楽: 65
砂の中に埋もれていた遺跡が1つ。しかしその遺跡の影には数多くの人々の数奇な運命と命のやり取りがあった。
特に西田敏行演じる朱王礼が印象に残った。彼もまた漢人でありながら都から数千キロの辺境の地に流れ、そこで野望を背に周辺を巻き込み命をかけた大博打に打って出る。成功目前でちょっとしたことで歯車が狂い計画通りとはいかなくなり、それでも諦めることなく微かな可能性にかけて突撃を繰り返すが押し返される。「三度突撃したが、三度李元昊に届かなかった。四度目の突撃をする力は尽きた。俺はずっとこんな死に方が俺にふさわしいと思っていた。」と力尽き崩れ落ちる姿に、一生に一度の大勝負に挑んだ彼の運命の重さと儚さを感じた。
わざわざ中国まで撮影にいった実写映像はかなり美しい。砂漠にオアシスに古い城壁がそのまま登場する。流石に「レッドクリフ」のように数千人規模の部隊が縦横無尽に駆け回るとまではいかなかかったが、数百人程度と思われるエキストラが戦闘をするのは日本映画としては健闘している。
現在に残る遺跡からはそんな人々のことまではわからない。たとえ歴史に名を残していなくても、だが現代に生きる人々が、実際に多くの人々が時代を命懸けで生き抜いていたというそんなことを遺跡から想像できてしまうのが浪漫である。しかし浪漫では済まされない命のやり取りを当時の時代背景は含んでいた。そんな悠久の時の流れを感じさせる映画。
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