劇場公開日 1999年3月6日

「OP映像だけはドラえもん映画史上屈指の出来」映画ドラえもん のび太の宇宙漂流記 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5OP映像だけはドラえもん映画史上屈指の出来

2024年11月2日
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見終わってからそれほど経過していないはずなのだが、マジでほとんど内容を覚えていない。

宇宙というテーマであれば『宇宙開拓史』『宇宙小戦争』といった良作が既にあるため、やはり作品として凡庸な印象は否めない。

ドラえもん一行が乗り込んだ宇宙船の船員である宇宙人4人の造形のバラバラさはどことなく『スターウォーズ』に端を発する20世紀後半のスペースオペラを彷彿とさせる。

船員の中の一人に裏切り者がいるという展開も面白いといえば面白いのだが、そこからの葛藤と回復があまりにもありふれていたように思う。

とはいえ本作で最も印象的なのは、宇宙冒険の途中で降り立った惑星がなぜか地球だった…という不可解な展開に端を発する一連のシーンだ。裏山で宇宙船を降りたのび太たちはそれぞれ帰路につくが、何かがおかしい。のび太は大目玉を覚悟で帰宅したにもかかわらず、彼の両親はそれを咎めないばかりか、不自然なくらい温かく彼を迎え入れる。

そこでのび太はハッと目を覚ます。すると異形の怪物がのび太を捕らえようとしていた。そう、そこは訪れた者に幻覚を見せる幻惑の星だったのだ。

演出上、現実と幻覚が地続きに描写されていたが故に、映画を観ている我々までもが疑似的に幻惑の罠に陥っていたのだ、とそのときようやく気付かされる。平穏な日常と荒廃しきった惑星の落差がまた恐ろしい。

あと、OP映像の出来でいえば本作はドラえもん映画史上屈指の出来だったといえるだろう。無重力を共通項にシームレスに接続された宇宙と深海をドラえもんたちが縦横無尽に動き回るダイナミックなアニメーションに心打たれた。それにしてもイントロ部分の作画は流石に気合が入りすぎだろ、と思う。

因果