吶喊のレビュー・感想・評価
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本作が一体何の映画なのかは、 1975年とはどんな年であったのか?を知ることから初めないと、21世紀に生きる私達には理解出来ないと思います
吶喊 (とっかん)
辞書を引くと突撃に移る前に、士気を高めるために、指揮者の合図に応じて声を大きく張り上げること。その叫び声。とありました
冒頭、男が女を犯そうとしてこの吶喊の叫び声をあげるシーンから始まります
これが吶喊です
違う、こんな説明では何もわからない
これは名詞ではないのです
これは動詞だ、命令形だ、そう理解しないと本作の一切合財が意味不明になってしまいます
つまり「吶喊せよ!」という意味だったのだと思います
多勢に無勢であっても意気消沈するな、ときの声を挙げて突撃せよ!そう鼓舞している映画であるということです
誰に?広義には日本国民に対してです
狭義には左翼陣営の仲間に対してです
1975年 公開、ATG 、カラー作品
岡田裕介 製作
プロデューサーとして最初の作品
万次郎役としても出演しています
公開から半世紀も経ってしまうと、何故にこのような映画が撮られたのか皆目わからなくなってしまいます
本作とは一体何の映画なのかは、
1975年とはどんな年であったのか?を知ることから初めないと、21世紀に生きる私達には理解出来ないと思います
人民広場事件から25年目、60年安保闘争敗退から15年目、70年安保闘争敗退から5年目
ベトナム戦争が終結した年、すなわちベ平連が目的を無くした年、成田空港闘争は膠着状態で開港に進んでいました、大学紛争は全国的に沈静化して終息しつつあり、連合赤軍事件という陰惨なリンチ殺人事件が国民に衝撃を与えていました
さらにそこに赤軍派によるクアラルンプール事件がおき世界を揺るがせました
国民には反体制運動への嫌悪感が大きく広がっていました
更に、左翼陣営内部においても主導権争いによる内ゲバ事件も頻発していた、そんな時代だったのです
団塊の世代は、25歳から30歳位にもなろうとしていて、数年の留年も限度があり、就職しなくてはならない年齢になろうとしていました、中には家族も持っていて、もはや昔のように政治闘争に明け暮れる余裕もなくなっていました
ポスト団塊世代は、シラケ世代とも言われ政治には見向きもしなくなり当然左翼陣営に加わろうという新入生は激減していました
♪もう若くないさと~君に言い訳したね~という歌詞のある「いちご白書をもう一度」という歌は1975年の大ヒット曲でした
つまり、60年代には革命を目前にまで見た反体制運動は全面的な退潮を迎えていたのです
まるで、官軍に追い詰められている奥羽列藩同盟軍のように
時の流れには逆らえないような敗北感が左翼陣営に満ちていたのです
本作を見て、つまらない、面白くないと思われるのは当然だと思います
確かにいま反体制運動は奥羽列藩同盟軍のように追い詰められているかもしれない、
しかしそれを認めて下を向くな、
吶喊せよ!
性欲ならば、吶喊する元気さがいくらでもまだあるだろう?
反体制運動は性欲のように国民の原初的な権利であり、欲求なのだだから、敗退する事など未来永劫にありはしないのだ
本作はそんな映画なのだと思います
半世紀も過ぎ去って21世紀の世の中でこのようなアジテーションをされても、余りに奇異にすぎて引いてしまいます
受け付けない方も多いと思います
しかし、公開当時には、このような製作意図は容易に伝わったのだと思います
撮影 木村大作とありますが、彼らしい映像は何ひとつありません
--すべてがかみ合っていない
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