劇場公開日 2020年11月6日

「二・二六事件が全く分からない」動乱 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5二・二六事件が全く分からない

2022年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

森谷司郎監督の超大作であり、二・二六事件を描きつつ男女の愛や死生観なども描こうとしたようだが、二・二六事件が何故・どのような経緯で起こされたのかが全く分からない映画になってしまっている。

二部構成から成り、第一部「海峡を渡る愛」は軍人(高倉健)と貧困で売られていく女性(吉永小百合)の出会いが描かれていて、五・一五事件が起こるものの事件の経緯が殆ど分からず。また、吉永小百合が遊女になる…というのも、日活映画での「清楚なよいこ的イメージ」が強いので、ちょっと無理がある感じ。
二部「雪降り止まず」は、二・二六事件を描こうとしている雰囲気はあるが、高倉健と吉永小百合が籍を入れずに夫婦同然で暮らしているものの、いわゆる「夫婦生活」は無い。そのため、吉永小百合が高倉健に「私の身体が汚れているから抱いてくれないのですか?」などと問い詰める場面がある。

全体的に、映像は本作の監督=森谷司郎が頑張っていて、山本薩夫監督作品っぽい骨太に見える素晴らしさだが、脚本が残念。
沢井信一郎が助監督をしており、本作の直後に澤井信一郎監督としてデビューして、あの大傑作『Wの悲劇』を作る。澤井監督が森谷司郎監督の指導を受けていたのか…。

やはり、二・二六事件の発生経緯が皆目分からないのは致命的であろう。
スタッフ、キャストも豪華なだけに惜しい。

<映倫No.19659>

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たいちぃ