「昭和7年5.15事件から昭和11年2.26事件までの混乱の時代」動乱 mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和7年5.15事件から昭和11年2.26事件までの混乱の時代
先日、映画『226』(1989)を見たのですが、当時の官僚たちを殺害にまで至った二・二六事件にしては、青年将校たちの切羽詰まったものが感じられなくて、他にも二・二六事件を扱った映画がないかと探していて、この映画にたどり着きました。
この『動乱』においては、昭和7年〜昭和11年ぐらいまでの混乱の世を生き抜く、せつない男女の姿が描かれていますが、二・二六事件はあくまでも、その時代背景であって、事件そのものがメインテーマではないような気がしました。事件の当日(昭和11年2月26日)の、午前4時ぐらいから、分刻みでテロップが流れますが、説明の範疇でした。先に『226』を見たので、歴史的なおさらいとして把握することはできましたが、事件に至るまでの経緯などは、やはり、よくわかりませんでした。
メロドラマといえばメロドラマなのかもしれませんが、夫婦になってからも、2人の間には、常にストイックな壁みたいなものがありました。枕を一つ置いた寝床は、2人は一緒には眠っていないのだなと思わせるんだけれども、宮城は「妻」と言っている、けれども、戸籍は入っていないんだな……と。暗い時代背景に合わせたように、成就できない男女の行く末が重くのしかかってきます。「そばにいて欲しいんです」という言葉が印象的でした。女性にとっては、ある意味残酷ですね。でも、健さんだからかっこいい台詞でした。
青年将校たちは、それぞれ仮名のようでした。高倉健演じる宮城大尉は、安藤大尉だと思っていたのですが、磯部浅一がモデルになっていたようです。磯部浅一といえば、将校の中でも最後の最後まで呪いをはき続けて、獄中でも日記を書き、そこには天皇陛下に罵詈雑言を投げかけていたとも言われています。(最近得た浅知識ですが)寡黙で感情を抑えた高倉健の演技はよかったと思いますが、磯部のイメージとはちょっと違っていたような気がします。
二・二六事件ということを考えれば、青年将校たちの決起を肯定的に描くわけにもいかないし、映画が右寄りになっても難しいので、限界があるのかなと思ってしまいました。文学にゆだねて、三島由紀夫の『憂国』もしくは『英霊の聲』を読んだ方がいいのかも(大昔の若い時に読みかけて、難しくて挫折してしまいましたが)。
1954年の映画『叛乱』、これも二・二六事件のものらしいです。レンタル屋で探してこうようかな。