東京物語のレビュー・感想・評価
全86件中、81~86件目を表示
日本映画初の英国映画協会の選ぶ世界第一位作品
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:55点|音楽:60点 )
小津監督作品をいくつか観たが、舞台劇のように科白がかぶらないように順番を守りながら交互に言い合う不自然な演出が好きになれなくて、自分には合わないと思ってそれ以降は避けてきた。しかし「東京物語」に影響を受けたというロバート・デ・ニーロ主演の「みんな元気」がなかなか良かったので、再び小津監督作品に挑戦してみる気になった。本作品が世界第一位に日本の映画として初めて選ばれたというのも後押しになった。この作品でもやはり科白は交互に言い合うのだが、ゆったりとした雰囲気に加えて、この時代の家族の持つ距離感や礼儀というのもあってか、それは思ったほど気にならなかった。
多くのひどい家族関係を直接・間接に見聞きしている自分としては、この作品の中に大きな展開は見いだせなかった。作品中に悪人は一人も登場していないと思う。むしろある程度年齢を重ねた大人にとって、この程度のことはありきたりのことではないだろうか。それぞれが自分の生活を築き上げて今を生きれば、立場も変わるしいつまでも昔と同じではいられないのは当然。だから話に引き込まれたというほどではない。
しかし家族関係が変化しそれまであったであろう絆も微妙な関係になっていく姿を捉えてまとめあげた小津監督の巧みさはあった。そのような様子を演じる善良な老夫婦・それぞれの立場のある子供たち・優しさを見せる未亡人は存在感を見せた。映像は古い白黒なうえに建物内での撮影が多くてたいしたことはないが、そこにある見えない人間関係をうまく表現してあったように思う。家族はこうあるべきと思って上を見ればきりがないし、理想と現実は違うのだ。
やっぱり、子どもの方がええのう
映画「東京物語」(小津安二郎監督)から。
東京で働いている子どもたちに会いに、20年ぶりに上京した老夫婦。
そこで待っていたのは、自分たちの生活が優先で、
久しぶりに会った両親をゆっくり歓迎する余裕のない子どもたち。
これが1953年、60年近く前に製作された映画と知り驚いた。
現在の私たちに警鐘を鳴らしている、と言っても過言ではない。
日本を代表すると言われている映画監督、小津安二郎さんは、
もしかしたら、予言者ではないだろうか、と思わせるほどだった。
それくらいに「家族、親子、兄弟姉妹、嫁姑」について、
「理想と現実」を組み合わせながら、高度成長期の激動を映し出している。
また、これから日本の問題になるであろう「高齢者の孤独感」も、
ラストシーンの「時計の音」と「一人になると、急に日が長くなりますよ」
の台詞だけで、私には充分に伝わってきた。
そんな多くのメモから、私が選んだのは、やっぱり親だなぁ・・と感じた
老夫婦の会話。
東京での10日間を振り返り「孫もおおきゅうなって」と妻、
「ウム・・よう昔から子どもより孫の方が可愛いと言うけぇど、
お前、どうじゃった?」と夫。
それに続けて「お父さんは?」「やっぱり、子どもの方がええのう」
「そうですなぁ」・・ただ、それだけの会話であった。
自分たちの突然の上京に、子どもたちに迷惑がられていたのも感じ、
なおかつ「大きくなって変わってしまった子どもたち」を実感しながら、
それでも「孫より子ども」と言い切った老夫婦に、拍手を送りたい。
映画「東京家族」(山田洋次監督)に続けて観ることをお薦めする。
小津安二郎監督の偉大さが、よりわかるはずだから。
色々な人生模様の家族と晩年の生活のあり様をさりげなく描いた心に残る名作
黒澤明の「七人の侍」と並ぶ、世界で高評価の本作であるが、慌ただしかったサラリーマン時代にはよく理解できなかった映画であった。定年退職して孫もできて、改めてこの気になる映画に向き合うこととした(山田洋次監督の「東京家族」鑑賞の予習も兼ねて)。
映画のペースに合わせてじっくりと鑑賞する(リマスター版)と、2時間半という長さも忘れるくらいに内容のある考えさせられる映画であった。少なくとも、多種多様の人生があり、また、色々な人生観があることだけは確かである。出演した俳優陣の演技が素晴らしく文句のつけようがなかった。平凡に見える個々の台詞にも重みがあって場面場面に味わいがあるように感じた。 戦争で家族を失う悲しさも伝わってきた。小津さんは室内シーンでは低位置のカメラアングルから上方に向けて撮影していたのが特徴的であった。家族問題は世界共通であろう。
繰り返される家族の風景
今だからこそ観てよかったです
人生で最初の小津安二郎監督作品でございます。
古き良き日本の情景を描いてる、なんて勝手に思い込んで観たらとんだ大違いでした。さらっと、はんなりと、みやびに描きながら、そこには日本人特有の薄笑い的な冷たさがあります。
これを観て、それまで見えなかった「日本人」というものがよく見えるの様になりました。あくまで耽美的に、礼儀を重んじ、そして体裁を整える。でも、そういう文化風習をもったからこその怖さってあるんですね。それは「美しい日本」かもしれないが、美しさの裏で毒が満載です。いつも健気にいる原節子がちらっと見せる影が実に怖い。
1953年っていったら、敗戦から8年ですか。経済化がここまで進んでいたんですね。戦前と戦後を生きる老夫婦は、まったく異なる時代を生きながら、いつでもにこやかに、そして礼を重んじ、そして孤独になっていく。二つの時代を生きるには、年をとりすぎていた悲劇なのでしょう。
他の小津安二郎作品も観てみたいと思いました。
全86件中、81~86件目を表示