「かつての日本の指導者たちの無責任性」東京裁判 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
かつての日本の指導者たちの無責任性
小林正樹監督による1983年製作(277分)の日本映画。配給:太秦、劇場公開日:2019年8月3日。その他の公開日:1983年6月4日(日本初公開)。
長時間なのでかなり退屈するかもしれないと思ったが、全くそういうことはなかった。戦犯28名に関し、有名でありながら東条英機以外は殆ど風貌さえ知らなかったので、佇まいや話す姿等を見れたことを、かなり新鮮に感じた。
連合国に対して批判的なスタンスを予想したが、あまりそういうことは無く、基本的にはフェアな印象。ただ、心情的には戦犯に寄り添っている様には思えた。被告人たちに米国弁護士がつき、法律のプロとして知力を尽くして弁護していたのには正直敬意を覚えた。マッカーサーの意向を受け天皇を無罪にしたい米国人検察官と天皇を有罪にしたいオーストラリア裁判長の攻防描写も、意外性も有り、見応えがあった。
青年将校たちの理論的リーダーであった大川周明が、裁判中に後ろから東條の頭をポカリと叩く映像が有り唖然。いかにも狂っている様に思え、あれが助かるための演技だとしたら、凄い演技力とは思った。
ホロコースト(ニュルンベルク裁判で使われたという連合軍による映像)と南京大虐殺(米国聖公会牧師John Mageeによって撮影されたという映像)のリアルな映像には驚かされた。どちらも今まで全く見たことがなかったこと自体、もかなりショック。
戦争自体は過去合法であり、事後法で裁くのは私も法律の性質上ダメだとは思うが、国のリーダーとして勝てる見込みも無い戦争を開始遂行した責任、大勢の日本国民を巻き添えにした責任は少なくとも有り、その責任感を世界に向けて発した人間がただの1人もいなかったことは、正直とても残念に思た。日本国のリーダーとしての使命感/責任感は誰も無かった?
日本のエリートは戦前も戦後も同じ無責任人種ということか。
被告人
関東軍関係: 板垣征四郎 - 南次郎 - 梅津美治郎、特務機関: 土肥原賢二、陸軍中央: 荒木貞夫 - 松井石根 - 畑俊六 - 木村兵太郎 - 武藤章 - 佐藤賢了 - 橋本欣五郎、海軍中央永野修身 - 嶋田繁太郎 - 岡敬純、総理大臣: 広田弘毅(外交官) - 平沼騏一郎(司法官僚) - 東條英機(陸軍) - 小磯国昭(陸軍)、大蔵大臣: 賀屋興宣、内大臣: 木戸幸一、外務大臣: 松岡洋右 - 重光葵 - 東郷茂徳、外交官: 大島浩(駐ドイツ大使) - 白鳥敏夫(駐イタリア大使)、企画院総裁: 鈴木貞一 - 星野直樹、民間人: 大川周明(思想家)。
監督小林正樹、原案稲垣俊、脚本小林正樹 小笠原清、総プロデューサー足澤禎吉 須藤博、エグゼクティブプロデューサー杉山捷三、プロデューサー荒木正也 安武龍、編集浦岡敬一、録音西崎英雄、音楽武満徹、演奏東京コンサーツ、ナレーター佐藤慶、資料撮影、奥村祐治ネガ編集南とめ、監督補佐小笠原清、ナレーター佐藤慶、翻訳監修山崎剛太郎、史実考査細谷千博 安藤仁介、助監督戸井田克彦、製作進行光森忠勝。
