「即興性を重視するという、当時としては斬新な演出方法が印象的な一作」アメリカの影 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
即興性を重視するという、当時としては斬新な演出方法が印象的な一作
初めてジョン・カサベテス監督作品を鑑賞した観客による感想です。
全編モノクロームの映像は、1950年代(1959年公開・日本では1965年初公開)の、米国・マンハッタンにおける様々な状況を切り取っています。主人公である兄弟たち(ベン・カラザースなど)の動向を追う形で物語が展開していきますが、映像も構図も、そして音声もどこか粗い印象を受けます。
当時の撮影技術ではこれが当たり前なのかな、と思いつつ鑑賞したところ、最後に本作は、ほぼ全編が即興的演出という説明がありました。だからこそ、劇映画としては粗くとも妙な生々しさがあったのか、と納得しました。
本作は俳優として活躍していたカサベテスの初監督作品で、ラジオ番組の企画によって本作を作成したとのこと。その後も俳優として『ローズマリーの赤ちゃん』(1969)に出演するなど順調に経歴を積み重ねていきますが、そうして得た収入を映画制作につぎ込んで、商業映画としては成立しにくい作品作りに挑戦したり、無名の映画作家に活躍の場を与えたりしています。その中の一人に、先日公開の『ファースト・カウ』(初公開は2019)を監督した、ケリー・ライカート監督もいます。
彼が「アメリカインディペンデント映画の父」という評価を受けている理由がはっきりと分かる業績です。『フェイシズ』(1968)や『グロリア』(1980)など、いろいろと名作をたどってみたくなる監督でした!
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