「影的描写の中で光も感じつつ…」アメリカの影 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
影的描写の中で光も感じつつ…
ようやくインディペンデント映画の金字塔と
誉れ高いジョン・カサベテス監督の当作品を
鑑賞する機会を得た。
街中でのゲリラ的撮影はほぼ同時期の
「勝手にしやがれ」などの
ヌーベルバーグ映画を彷彿させ、
欧米同時期に似た手法の映画が生まれていた
のだろうかと、不思議な感じを受けた。
当時の世相を的確に写し取ったとの
特異なセミ・ドキュメンタリータッチと
言われる演技に見えない映像のこの作品、
製作された時点での
歴史的価値があったのだとしても、
個人的な作品の評価は
教養の観点でも娯楽の点においても、
己の感性にどう響いたかだが、
何かとすぐに激高し
暴力へも発展させる登場人物の振る舞いには
嫌悪感があり、また、
差別する・しないの登場人物が混在する
設定に、三兄妹の人種差別的苦悩が
私の心にクローズアップされることは
余り無かった。
しかし、差別というものは
普段差別される側同士では
その意識は無いのだが、
する側の意識に触発されて被差別意識が
掘り起こされてしまうことを
感じさせられる作品だった。
原題は“影”で、
そんなアメリカの影的描写が続いたが、
愛した女性が黒人の血を引いていたことが
分かって、しかし、臆しながらも
彼女に未練を引きずる白人男性に
私は“光”を感じつつ初鑑賞を終えた。
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トミーさんのコメント
2023年11月9日
共感ありがとうございます。
カサヴェテス監督作品は「グロリア」しか観てないので、勉強のつもりで観ました。特集がしばらく有りますが、次の作品はいきなり2時間超えでちょっとビビってます。