「「女王蜂」、「病院坂の首縊りの家」での失敗のリベンジのように感じました」天河伝説殺人事件 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
「女王蜂」、「病院坂の首縊りの家」での失敗のリベンジのように感じました
素晴らしい!市川崑監督の本気を感じました
そしてその本気のもの凄さを知りました
まずタイトルバックのスタイリッシュなこと!
これぞ市川崑監督です
カメラも照明も美意識の塊です
色彩の鮮やかさも溜め息がでるほど
薄暗く、薄ぼんやりしたシーンも計算の上での演出です
人呼んでコン・タッチという独特のカット繋ぎも多用されています
まるで50年代、60年代の市川崑監督の全盛期の味わいが濃厚にあるのです
音楽の使い方も現代的で見事でした
大変に満足しました
全く違う物語でありながら、市川崑監督がまるで1977年の「悪魔の手毬唄」を本当ならこう撮りたかったというスタイルではなかったかと思わせます
「女王蜂」、「病院坂の首縊りの家」での失敗のリベンジのように感じました
財前直見25歳の美しさったら!
一瞬誰か判らなかったほど
彼女は本作でブレイクしたのです
その後のドラマでの大活躍はご存知の通り
彼女が10年早く生まれていれば、「女王蜂」の主演にぴったりだったのに!
もしかしたら、彼女の為に市川崑監督は本作を撮ったのかも知れないとまで思いました
薪能の幽玄のシーンは圧倒的な美しさでした
奈良県吉野郡天川村
霊峰大峯山の登山口で実在の村です
大昔、天川村に行って劇中の宿のような所に泊まったことがあります
当時はふもとの鉄道の駅からバスで4時間はかかりました
峠をいくつもいくつも登っては下りを繰り返していくのです
それもバスが対向もできないような細いヘアピンカーブばかりの山道です
正に冗談抜きの秘境です
空気からして違います
霊気というようなものがあるのです
ですから、当然ながら天川村でロケはとてもできず、伊豆修善寺などの全く違うロケしやすい場所で撮影されています
近鉄吉野駅だけは実際に撮影されて登場します
いまでは道が大変に整備されて、1 時間も掛からないようです
天河神社も実在します
正式には天河大辨財天社というそうです
神楽殿という能舞台もあります
音楽の神、芸能の神と称えられています
但し、神様に呼ばれないと辿り着けない神社という伝説があります
観光化されていない本物の日本の秘境はまだそこにあります
ぜひ映画の舞台としてロケして欲しいところです