「すごいな...」鉄男 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
すごいな...
1979年7月公開。俺が19歳、上京した年だ。東京の街を知るために「あんぐる」という雑誌を買い、映画や音楽を知るために「ぴあ」や「シティロード」を買い、とし始めた頃だ。なぜ昔話を書いたかというと、特に「シティロード」では、この「鉄男」が毎号巻頭を飾る勢いで、「映画好きなら観なきゃバカだぜ」的に華々しくとりあげられていたから。しかし、まだどれもこれも手についてなかった俺は、公開当時は見逃し、その後、名画座で繰り返し上映されても観る機会なく、今日まできていた。
自分の中に「俺、映画好きです」と堂々と言いにくいようなもやもや感があるのは、これを観ていないのも一因と思う。
しかし、とうとう観ました。ありがとう、目黒シネマさん!ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリなんだね。すごいね。
スタッフのほとんど塚本監督(晋也)がやっているのは、自主製作映画だったってことかな?ググると、いやいや塚本監督はいつもそうなんだね、すごいね。初上映は、中野武蔵野ホールなんだね。映画館の館主として、こういった映画の一番乗りだったってことは、とても誇れることだろうな。
監督も「映像と音の映画」と言ってるけど、まさにそうだね。67分間、その2つでぶん殴られ続ける感じ。痛いし怖かった。コマどりとモンタージュが連発される映像。大音量の中でめまぐるしく、脳みそをかき回される感じ。カルトムービーと言われるだけあるわ。
いやあ、感想ないわ。カルトだから。十分、かき回された。そしてこの話で、観客を1時間強の間、釘付けにする才能はすごいと思う。
おまけ
諸星大二郎のデビュー作にして傑作漫画「生物都市」と同じ匂いがする部分があった。特にラスト近くの主人公のセリフ「ああ、気持ちがいい」は「生物都市」でおじいさんがつぶやく「もう、腰も背中も痛くない」とみごとに対をなしてるもんね。塚本監督は過去に読んでいたが、制作段階では存在自体を忘れており、指摘を受けてから類似点に気付いたとのこと。きっとこうやって才能は重なり合って、俺たちにより高いところまで見せてくれるんだね。
おまけ2
本作と全く関係ないが、目黒シネマは「V.MARIA」の初上映館とのこと。本作や「侍タイムスリッパー」(初上映はシネマロサ) みたいに、拡大してくといいね。