劇場公開日 1989年7月1日

「鉄とはカネとも読むのだ」鉄男 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0鉄とはカネとも読むのだ

2020年4月4日
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カラー時代の白黒映画で思い出すのは
1977年 イレイザーヘッド
1980年 エレファントマン
1980年 レイジングブル
1984年 ストレンジャーインパラダイス
1989年 本作

くせ者作品ばかり
本作はその最右翼だろう
一番似ているのはイレイザーヘッドだと思った
ストーリーには大して意味はない
マインドセットで見えるものが違うということではないだろうか

都内の廃工場にも見えるスクラップ工場
付近の古い住宅街
これらは30年後の21世紀の現在はどうなっているだろうか?
すべてタワーマンション街に変貌しているのだ

1989年バブル真っ盛り
金にまみれて人間が人間で無くなっていくそんな時代
人間の精神が金に浸食されて、金が全てであり、金の力で闘争する世界に変わっていく
男女の関係もまた金にまみれてしまう

鉄とはカネとも読むのだ

ラストシーンの雄叫びは金の力でジャパンアズナンバーワンと高揚しているあの頃の日本人の姿そのものなのだ

そして21世紀の私達は知っている
バブルは崩壊し、30年以上の喪われた年月が続いて来たことを

無敵感に高揚しながらも、これは異常なことなのだという自覚はある
自らも何か得体の知れない怪物になってしまったのうにふと我に帰る瞬間もあったのだ
そして大崩壊の予感に震えてもいたのだ

それを本作は映像に写し取っているのではないだろうか

あき240