綴方教室

劇場公開日:

解説

執筆当時、無名の小学生だった豊田正子のベストセラー作文集を、山本嘉次郎監督のメガホンで映画化。東京下町のバラック街で、両親や兄弟と共に慎ましい生活を送る小学6年生の正子は、作文が得意でいつも先生からほめられていた。そんなある日、正子の作文が雑誌「赤い鳥」に掲載される。大喜びの正子だったが、この作文の内容が原因で、正子の父は職を失いかけてしまう。子役時代の高峰秀子が主人公を好演。

1938年製作/日本
配給:東宝東京
劇場公開日:1938年8月21日

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映画レビュー

3.5綴方という交点に浮かぶ貧富のエレジー

2022年8月15日
iPhoneアプリから投稿

高峰秀子演じる正子は先生のアドバイスを受けて身の回りで起きたことをありのまま綴方にしていく。彼女の透徹として嘘のない文章は、ついには文芸誌に掲載されるまでの評価を受けるが、そこに書いたほんの些細な小話がきっかけで隣家の名誉を貶めてしまう。

正子の母は、なんでも正直に書きゃいいってモンじゃないよ、と彼女を叱りつけるが、一方で綴方の先生は私が悪かったんです、と正子を庇う。正子は先生からの評価と近隣の人々からの評価の落差に戸惑い、落ち込む。

文壇や綴方の先生は正子の文章のうまさ、つまり芸術的価値を最大限伸ばすことを主眼に置いているが、そこでは正子ら庶民たちの生活のありさまはまったく度外視されていた。それゆえ正子の文章に潜んだご近所トラブルの火種を見過ごしてしまった(あるいはその程度のことがまさか問題になろうとは考えもしなかった)のだと思う。

しかしご近所付き合いの上に生活を、ひいては生存を位置付ける正子ら庶民にあっては、これはまさしく死活問題に他ならない。実際、この事件によって正子の父は仕事を失うリスクに怯える羽目になる。

「綴方」とは芸術と生活が半々に混じり合う不思議な場だ。本作はそこに裕福な者と貧乏な者のささやかだが確かなズレを描出していたと思う。

また、当の正子本人がそういう階級的ルサンチマンを過度に抱え込んでいなかったのもよかった。ラストシーンで「卒業したら工場に行くんです!」と先生に向かって笑顔で返事する正子の表情には曇りひとつなかった。彼女にとってはそれが本当に幸福なのだ。社会派ぶって嫌な余韻を持たせるよりよっぽど嘘がない。

綴方の先生がこの映画を見たらたぶん「上手ですね」と褒めてくれるんじゃないかと思う。

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因果

4.5・デコちゃんがみずみずしい! ・綴方の力が伸びるのは素直だからこそ...

2020年2月5日
iPhoneアプリから投稿

・デコちゃんがみずみずしい!
・綴方の力が伸びるのは素直だからこそなのかな
・この時代の下町のご近所の雰囲気最高
・父も母も嫌な人間じゃないから見ていられた

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小鳩組