土のレビュー・感想・評価
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映像音楽、まさに映画の醍醐味
Amazonでみましたが一気にみました。農村小作農というものが見事に描かれている。傷んでるフィルムであっても、ものとも、しない。凄い映画です。是非観てほしい映画。映画好きの二三人の人に勧めてみたが少し観て無理ですと、拒絶された。残念。最後まででも我慢してでも観てほしいのだが、、、、
内田吐夢監督の非凡なる才能を堪能できる作品です
まるでバルビゾン派の絵画と同じです
バルビゾン派とは1830年ごろからフランスはパリ郊外南方60キロ程のバルビゾン村で活動した画家達のことです
その絵画の特徴は、農村の光景や働く農民達の姿をあるがまま、見たままに描くということです
つまり「自然主義」です
ジャン=フランソワ・ミレーが、1851年のサロン・ド・パリに出品した「種まく人」が特に有名です
ほら、美術の教科書にものっているあれです
その作品は、単に農作業をする農民の姿を描いたものにすぎません
しかしその作品は、当時のサロンで大きな拒否反応を受けたのです
労働者の悲惨な生活を訴える社会主義的な主張がある絵画だと受け取られたのです
サロンに出入りするような、パリで裕福に住み暮らしている人々にとっては、その貧しい農村や農民の姿をありのままに描いた絵画が、まるで自分たちを批判しているようにみえたのです
それと本作は同じです
本作はあくまで、当時の農村の姿をリアリズムに描いています
それも当時の国民の大多数を占める貧しい小作農の人々の姿です
東京や大阪などの都市の人々、工業や商業などの産業に勤める国民よりも、ずっと彼らの方が多数を占めていたのです
本作は1939年の公開
昭和恐慌は1929年のこと
まだ10年しか経っていません
とりわけ農村の打撃は大きく、不況の飢饉水準の窮乏に陥り、貧窮のあまり女子の身売りが深刻な問題となったりしていたのです
こうした社会不安の打開を求めるあまり、昭和維新を呼号した二二六事件が起きたりして日本は軍国主義にどんどん傾いていったのです
そんな中の本作公開です
本作2年前の1937年公開の小津安二郎監督作品は「淑女は何を忘れたか」です
本作との違いはどうでしょう!
もちろん、その作品は傑作です
しかし本作を観たならば、貧困に喘ぐ農村の暮らしの現実を知るべきだと感じと思うはずです
徹底的なリアリズムです
四季をありのままに撮るために、撮影期間も2年に及び撮影予算は膨らむ一方、それなのに内容はあまりに地味で映画会社からはこれは興行的に不安だ判断され、製作打ち切りを宣告されてしまったそうです
しかし撮影所長が抗議の辞職したほどに、撮影現場はこれは傑作ができる、いや本作こそいまの日本に必要な作品であり、絶対に撮らなければならない映画であるという固い信念があったようです
予算を他の作品から掠めとってまでして、こっそりと撮影を進め完成させたそうです
公開してみると本作は大ヒットしました
名のある映画賞も受賞しています
文部省推薦も受け、文部大臣賞受賞になったほどです
当時の国民の大多数の人々の境遇と激しく共振したのです
21世紀に生きる私達ですら感動するのです
当時の人々の感動の深さがどれほどのものだったことでしょう!
土
即ち国土
そこに国民が生きていくすべてがあるのです
困窮にへこたれず、幾多の悲劇に遭おうとも前を向いて生きていくしかないのです
残念ながらこの結末部分は欠損していて、テロップのみで終わってしまいます
音声もこもっていて台詞は殆ど聞き取れません
それでも作品としてのメッセージは十分に伝わってきます
感動があり、余韻が長く続くのです
本作からバルビゾン派の絵画と同じように社会主義的な主張をかぎ取る人々も多くいたことだとおもいます
日本の場合は批判を受けていると感じる立場でなく、本作は今後の社会主義活動に役立つ作品であると感じる人々の立場ですが
しかし本作はそうではないのです
あくまでリアリズムの映画なのです
内田吐夢監督の非凡なる才能を堪能できる作品です
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