月より帰る

劇場公開日:

解説

「ノーライフキング」や「櫻の園」のシナリオ・ライターとして知られるじんのひろあきが、自身の主宰する劇団″マントル・マリン・シアター″の役者を起用して初監督したSF作品。16ミリ。

1994年製作/84分/日本
配給:シネカノン
劇場公開日:1994年12月10日

ストーリー

西暦2039年。″蘭宿″は、スペースコロニー移住計画のシュミレーションのためつくられた人工の地下都市である。今では実験も終了したため、管理人たち以外の住人は誰もいない。ある日この街に、月より帰ってきた影郎という男がやってくる。彼は管理人の一人であった高橋ミルコを受付に雇って、人生相談室を開設する。月に行きたいと願う男や、非合法の中和剤(汚染されている水をきれいにする)のバイヤーなど様々な人々が、人生相談を受けに訪ねてきた。人生相談の極意は相談者が既に出している答えを感じ取ってそのまま言ってあげること、人にはみんな″ホモサピーニョ″(=人それぞれの人生の意味)があること、「願い続ければかならず望みはかなう」ということ……が影郎の考え方である。ある日、ストレスからか、彼の手が麻痺してしまう。影男の身を案じたミルコは、逆人生相談をしてあげる。影郎はミルコに、なぜ自分が人生相談をするのか、その理由について語り始める。彼が地球に帰還するとき、乗っていたシャトルが不慮の事故に遭った。影郎ともう一人の乗客が隔壁の中に閉じ込められた。徐々に空気は減っていき、宇宙服はそこにひとつしかなかった。影郎は死を覚悟して相手に宇宙服を着せた。ところが相手は「宇宙服を着た自分が外に出てコクピットを見てくる」と隔壁を開き、宇宙に弾き飛ばされてしまったのだ。「結局、俺は彼がどういう人間か知ることができなかった。彼ともっと話がしたかった」と語る影郎。……やがて宇宙服を着た男が蘭宿にやってくる。男は影郎を気絶させ、ひきずっていく。ミルコは男が被っているバイザーを、スタンバーで殴った。バイザーの中からバラの花びらがこぼれ、男は動きを止める。影郎はこの街での人生相談を止め、どこかへと去っていった。宇宙服を着た男は今でも動きを止めた場所に立ちつくしている。

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