ツィゴイネルワイゼンのレビュー・感想・評価
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生死に執着している華麗な絵巻物
とにかく食べる、とにかく意味不明なエピソードが次々に起こる。
ストーリーではなく場面展覧会であるがその絵がこれまた執着的に麗しい。
満開の桜、釈迦堂の切通、古風で洒落た洋館、黄泉のような屋敷、意味のわからないドイツ語談義、幻聴的な裸身の男の苦行的場面、骨への執着、女の悲劇、偏執的なちぎりこんにゃく、そうして何度も釈迦堂の切通を往来しているうちにどうも現実でない世界に引き摺り込まれていく怪異。
好き嫌いは分かれるがこんな映画は誰も作れないだろうと思うと現代版日本霊異記の絵巻物と思えて面白い
全く異次元の世界の怪談だ
恐かった、どんな怪談映画より恐かった
肌に粟が立った
終盤までは何が何だかさっぱり意味が分からない
意味を考える自体が無駄な世界
ただ強烈に美しい映像がコラージュされ積み重なっていく
特記すべきなのは音声が独特なのだ
効果音はある、背景音もある
しかし音声と登場人物の行為に依って発生する音は別録になっているような音になっている
まるで映像とリンクしたラジオドラマを聴いているかのように独立しているのだ
全く異次元の世界の怪談だ
これを鈴木清順監督は目指したのかもしれない
このようなものは初めての映画体験だった
全くユニークな他に類のないものだ
終盤までは意味不明で前衛的な独り善がりな映画でしかなく最低の評価の他ないと思っていたのが、見終わって見れば覆ってしまった
日本映画のオールタイムベストにリストアップされるのは納得できるものだった
血に染まる
女の股座から蟹が徐々にアップになる映像であったり清順美学に迷い込む独特な世界観。
食事のシーンが多くて食いっぷりも気持ち良く大量にコンニャクを千切るのも印象的。
奇想天外にも映る演出描写に色彩感覚が豊かな映像美など難解にも思えるストーリーに反して笑えるような、良い意味で雑に感じる場面もあり全体的に困惑してしまう!?
死のイメージを覆すリアルには描かない死。
清順美学
ストーリー・台詞・BGMが殆ど無く、とにかく間が長い
スライドショーを眺めているようだった
それでいて楽しめるようなタイプのシュールさは無い
純文学を読んだ時の、或いはクラシックを聴いた時の退屈さに似ている
好きな人には堪らない雰囲気だろう
眼球舐めは良かった
ロマンポルノ好きにはおすすめできるかもしれない
生と死のはざま
これは手の込んだホラー映画だ。
原田芳雄演じる中砂は死への欲動が大きく、対照的にその友人青地は死への恐怖に苛まれる。この二人ともが生への欲求は希薄に見える。しかしお互いの方向は逆なのだが、二人の死というものへの意識は非常に強い。とりわけ原田の死を欲望する表情が強烈である。
中砂の周囲には絶えず死のにおいが漂っている。海辺の田舎町で誘惑した女は崖から転落死。興味本位で門付の後を追ってみるが、彼らは一人の女を巡って争ったあげくに、二人の男は地中に埋もれて消えてしまう。そして妻の園は女の子を生むと間もなく死に、その中砂の娘も終盤では生きているのかそうでないのかがよく分からない。
そう、中砂の口をとおして語られる人々の生死はどれもはっきりしない。死んだことがはっきりとしていても、なぜ死ななければならなかったのかは謎なのである。彼の話をどこまで信じてよいものか半信半疑の青地と観客たちを取り残して、映画の半ば過ぎには中砂本人も死んでしまうのだ。
最も不思議な感覚にとらわれるのは、妻の園が死に、代わりに昔の知り合った芸者の小稲が後添えに収まっているあたりだ。観客も青地も、中砂が「そっくりだろう」と言うから、園と小稲が別人だと思い込んでいるだけである。死んだ中砂が、自分のことなど忘れてあの世では園とうまくやっていると嫉妬していることからも、小稲と園は別の存在だと了解することはできる。しかし、夜ごと青地家を訪ねて、中砂が貸した本の返却をせまる小稲に、芸者時代の朗らかさが消えてしまっているのはなぜだろう。青地家に来た小稲の姿に、むしろ無心にこんにゃくをちぎっていた園の影を感じるのは私だけだろうか。あのこんにゃくをちぎる音は、まるで肉を引きちぎるような音で気持ち悪かった。
園と小稲は果たして別個の人間だったのだろうか。別人だったとして、死んだのは本当はどっちなのか。映画は観る者を果てしない闇に迷いこませる。
どっちなのか分からなくなってしまうものがこの映画にはもう一つある。それは、青地が園(小稲)とたびたび出会う切通だ。青地と出会った彼女が、もと来た道を引き返して青地について行くように思えるのだが、気のせいだろうか。切通のほの暗さと複雑な地形に幻惑されてはっきりと意識しなかったが、あとになってから気になり始めた。
合理性をもって判断しようとするとストレスばかり感じて、意味が分からない内容。しかし、誰が死んだのか本当は分からない。生と死の反転。死を欲する者、死を恐れる者の混在。このような混乱こそが不気味で恐ろしい。
それにしても、出てくる人物は皆よく食う。でっかいうなぎ、こんにゃくてんこ盛りの鍋、所狭しと並んだ朱塗りの碗。食べているということだけが生きている証拠なのだと言わんばかりに、生きている者たちは食欲全開で料理を口に運ぶ。
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