「ダサカッコいいチンピラ、最高!」チ・ン・ピ・ラ(1984) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ダサカッコいいチンピラ、最高!
たった一本の主演作『竜二』を遺して早世した金子正次の遺稿の一つを、『竜二』を監督した盟友・川島透が映画化。
『竜二』とも通ずる、青春アウトロー・ムービー。
道夫と洋一。
二人は、チンピラ。
今やすっかり死語となった“チンピラ”。
ヤンキーみたいに子供じみてる訳でもなく、ホンマもんのヤクザさんでもない。
勝手気ままな自由人。
競馬のノミ屋のケチな商売で金を稼ぎ、行きつけのバーで殺しの芝居をし、時々ヤクザのフリして強請もする。
派手なシャツを着こなし、サングラスを掛け、いい車で渋谷の街を走り回る。
チンピラ、最高~! 俺たちゃカッコいい!
ところがどっこい、この二人…
ヤンキーや堅気の人には粋がれるけど、警察やヤクザの前では途端に大人しくなる。居なくなると愚痴を吐く。
ヘタレ。カッコ悪…。
確かにヤクザは憧れ。
でも、憧れと実際になるは違う。
今も随分色々やらかしてるけど、ホンマもんになったら、それこそ一生モン。今みたいに気ままにお天道様の下を謳歌出来ない。
が…
あるヘマをして、ヤクザにボコボコにされる。
何も出来ない。
悔しいぜ…。
ヤクザはプロで、俺たちはアマチュアなのか…という台詞が突き刺さる。
自由気ままだが、何処か哀しいチンピラ…。
柴田恭兵とジョニー大倉が好演。
例えば舘ひろしならチンピラ役でもずっとカッコいいだろうが、この二枚目半的な役柄は柴田恭兵にぴったり。
ジョニー大倉は後半から悲哀滲ませる儲け役。
ひょんな事から出会って柴田演じる洋一の女になった裕子に、現・益戸育江。その初々しさ、可愛らしさもさることながら、デビュー間もないのにも関わらず、ヌードやラブシーンやヤクに溺れるなどに挑み、ファム・ファタール的でもあり。ずっと女優続けていれば良かったのに、何処で道を間違えたのか…。
道夫と洋一を可愛がるホンマもんの親分・大谷役の川地民夫は劇中さながら貫禄違い。
また、80年代の渋谷の街並みがムードの盛り上げに一役買っている。この時青春時代だった方々には堪らないだろう。
自由気ままだった二人に転機が…。
大谷の親分から、正式にヤクザになるよう誘われた洋一。
悩む。というのも、兄貴分の道夫を差し置いて…。
誘われなかった道夫の心境は複雑。
何で洋一が…と思う一方、自分はもう三十路。組に入って自分より若い奴にペコペコ頭を下げるペーペーからなんて今更出来やしない。絶対的な縦社会のヤクザの世界…。
今の自分の生き方にケジメを付けたかった洋一は、ヤクザの世界へ。
訪れた別れ道…。
そんな時、少し前に大谷の親分から預かったジャブがきっかけで、最悪の事態に…。
やっちまったのは、道夫。
察しは付くと思うが、要は手を出してしまったのだ。
ヤクザのジャブに手を出すという事は、それこそ命と引き換え。
さらに道夫はもう一つ、とんでもない事をしでかしてしまう。
もうはっきり言って、救いようが無い大バカ。
道夫を探し出すよう命じられた洋一。二人にしか分からない場所で見つけ出す。
洋一もヤクザの端くれなら組に突き出すのが筋だが…、切っても切れない二人の絆。やっぱり俺は、ヤクザには成り切れない。
二人で逃げようとするが、そこに組のモンが。
二人は派手に散る…。
…と、思ったら!
そうか、アレか!
一世一代の大芝居。
何もかもに背を向けて、ダサくてもいい、これが俺たちの自由で気ままな生き方。
チンピラ、最高だぜ!