「わたしの大好きなお姉さん」ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
わたしの大好きなお姉さん
1992年に公開された『ちびまる子ちゃん』映画2作目。
ちょっと調べてみたら、配給収入は前作より大幅にダウンしたようだが(それで暫く映画は作られなくなったのかな…?)、現在までに3本作られた『ちびまる子ちゃん』の映画の中では最高作。
と言うより、一本の映画としても隠れた名作!
何と言っても本作、印象に残るのは、歌と映像。
劇中で数々の歌が用いられ、そこからイメージを膨らませた映像が展開する、普段の『ちびまる子ちゃん』では無いようなユニークな演出。
ファンタスティックであったり、シュールであったり。
さくらももこ自ら脚本も手掛け、ディズニーの『ファンタジア』のような音楽と映像の作品を目指したという。
普段の『ちびまる子ちゃん』とはちょっと変わった演出なので、好き嫌いは分かれるかも。
しかしそれが、映画的オリジナリティーに溢れている。
演出が趣向を凝らしているだけで、話自体は至って普通の『ちびまる子ちゃん』。
いや、これは語弊。話自体もとてもイイ!
図工の時間、自分の好きな歌をテーマに絵を描く事になったまる子たち。
音楽の時間に習った『めんこい仔馬』をテーマにする事に決めたが、なかなかイメージが湧かないまる子。
そんなある日、絵描きのお姉さんと知り合う。
お姉さんの描く絵に魅了され、まる子はイメージを膨らませていく…。
話のメインはまる子とお姉さんの交流。
二人の交流が本当にほっこり。
美人で優しいお姉さん。
まる子が「お姉さん!お姉さん!」と大好きになるのも無理はない。
お姉さんから『めんこい仔馬』が本当は悲しい歌である事を教えられたまる子。
いつも一緒だった少年と仔馬。が、やがて少年は戦争へ。仔馬も軍馬として戦場へ。悲しい別れ。
まる子はその悲しさを知りつつも、温かい絵を描く。
離れ離れになっても、少年と仔馬はいつも一緒…。
この『めんこい仔馬』をモチーフにした出会いと別れは、作品そのものにも言える。
お姉さんのお陰で絵が入賞したまる子。
一番でお姉さんに報告しに行くが…
お姉さんには恋人が居た。お姉さんとその恋人と一緒に水族館に行くなど遊んだりもした。
その恋人が、北海道の実家の牧場を継ぐ決心をする。一緒に来て欲しいという。それはつまり…。
が、東京に出てもっと自分の絵の可能性にチャレンジしたいお姉さん。
悩む。
二人はこのまま離れ離れになってしまうのか…?
その時まる子は…。
何よりお姉さんの幸せを願うまる子。ラストのある行動など、まる子の懸命な姿に目頭温かくさせる。
また、それは同時にまる子とお姉さんの別れも意味していた…。
子供より大人こそ感動する良質作。
心に残る台詞も多い。
オリジナリティーがあって、上質なドラマもあって、それでいてちゃんと『ちびまる子ちゃん』らしい毒のある笑いも。
お馴染みの面々は今回ちょっと出番は少ないが、笑わせる所は笑わせる。
劇中でまる子が言っていた。
これからたくさんの出会いや別れを繰り返して生きていくんだろうなぁ、と。
出会いは幸せ。
別れは悲しい。
でも、悲しいだけの別ればかりじゃない。
相手を思う、幸せな別れも。
離れ離れになっても、出会えた幸せは永遠に…。