劇場公開日 1978年4月8日

多羅尾伴内のレビュー・感想・評価

全1件を表示

2.0ある時は片目の運転手、ある時は流しの歌い手、…そして、またある時は怪人セムシ男、またある時は私立探偵多羅尾伴内、しかしてその実体は、正義と真実の使徒藤村大造!

2025年3月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

WOWOW「没後10年 鈴木則文監督特集」放送にて。

なんとも、東映らしく鈴木則文らしい犯罪活劇。脚本は東映になくてはならない人、高田宏治(大映出身)。
小林旭の一枚看板の次にクレジットされているのは〝八代亜紀 夏樹陽子〟である。
夏樹陽子は重要なキャラクターだが、八代亜紀はご本人役(と言っても、スナックの歌手)で一曲歌うだけの出番で、物語になんら関係しないという…。
キャッツ★アイ(ピンクレディのお色気版のようなデュオ)とアン・ルイスもご本人役で歌謡ステージの場面で登場する。で、彼女らも大きくクレジットされているのだ。

片岡千恵蔵が演じた「多羅尾伴内シリーズ」は、比佐芳武脚本、松田定次監督で1946〜48年に大映で4本が製作された。
チャンバラから現代劇に片岡千恵蔵を転換させるための企画で、刀を拳銃に置き換えているから、主人公の藤村大造は悪党に銃をぶっ放す探偵なのだ。
同時期(1947年)に東映(東横映画)では、同じ比佐芳武脚本、松田定次監督で片岡千恵蔵が金田一耕助を演じた『三本指の男』が製作されており、大映が多羅尾伴内シリーズを打ち切った後1953年から東映が再開(片岡千恵蔵と比佐芳武は大映から東横映画に移籍)させ、金田一耕助シリーズと並行して製作されている。
1967年には高城丈二主演でテレビシリーズ「七つの顔の男」が放映されている。
1977年に小池一夫と石森章太郎によって漫画「七つの顔を持つ男 多羅尾伴内」(二代目多羅尾伴内との師弟物語)が少年マガジンで連載開始されたことを受けて、東映が小林旭主演で復活させたのが本作だ。
〝原作 比佐芳武 劇画版 小池一夫 石森章太郎〟とクレジットされている。
ストーリーは『多羅尾伴内シリーズ 隼の魔王』(‘55)のリメイクということになっていて、漫画版は踏襲されていない。
本作のこのクオリティだから、同年に2作目『多羅尾伴内 鬼面村の惨劇』が製作されて、シリーズ(とは言えないが)は幕を閉じた。

アバンタイトルは和製フィルム・ノワールの雰囲気満点なのだが、小林旭のムード歌謡の歌声に乗ってタイトル表示からスタッフ・キャストロールが展開する。あぁ、台無しだなぁ…と思ったら、本編もそんな調子のチグハグさで進んでいくのだった。
この映画の一番良い点は、夏樹陽子だ。
夏樹陽子は綺麗で、本当に色っぽい。
彼女は悲劇のヒロインであり犯罪者だ。お色気パートも担当して、スプラッタまでやってくれている。
竹井みどりもヒロインとして登場するが、彼女はまだお色気路線に移行する前のようだ。

漫画よりも漫画っぽいストーリーが、割とポンポンと進んでいくから、観てはいられる。
片岡千恵蔵の頃より変装のエフェクトが格段に進化しているので、小林旭はちゃんと七変化するから逆に彼の魅力で映画を引っ張っていないという皮肉が起きている。それを、手練れの俳優たちが脇を固めて支えている感じだ。
最後の解決シークェンス、私立探偵が拳銃を撃ちまくっているのを、警察は催事場の外で黙って待っていたのか。藤村大造の詰問で主犯が罪を認めると脱兎のごとく踏み込んできた警察は、なんと逮捕状を持っていた。分かってたんかい!

コメントする (0件)
共感した! 0件)
kazz