劇場公開日 1984年12月15日

「若手天才女優薬師丸ひろ子と実力派ベテラン女優三田佳子の丁々発止の演技合戦」Wの悲劇 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5若手天才女優薬師丸ひろ子と実力派ベテラン女優三田佳子の丁々発止の演技合戦

2020年5月29日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHK BSプレミアムの放送で観賞。

薬師丸ひろ子と三田佳子の演技合戦が最大の見所。

薬師丸ひろ子と松田聖子のリアルタイム世代である私は、薬師丸ひろ子の主演映画は全部劇場で体験している。
彼女は爆発的なアイドル人気を得ていたが、最初から演技勘は天才的だった。この映画で演じた劇団研究生のような演技修行を彼女は経験していないのだ。
そんな薬師丸ひろ子が、遂に女優として高く評価されたのがこの作品である。

三田佳子の方はと言えば、私が子供の頃郷里のテレビで流れていた日本酒「土佐鶴」の時代劇仕立てのCMで、和装の女性の魅力を教えてくれた存在だ。

原作の夏樹静子の推理小説を作中の舞台劇にする大胆なアイディアは、公開当時も話題になった。
舞台上の母と娘が、それを演じるスター女優と劇団研究生の関係に重なる二重構造だが、現実世界の方を殺人事件にしなかったことで、意図せず掴んだチャンスをきっかけに「女優」の才能を開花させていく強かな主人公の姿を描くヒューマンドラマになっている。
更には、ベテラン三田佳子と天才薬師丸ひろ子の女優対決をも透かし見ることができる面白い仕掛けだ。

三田が情夫の腹上死の偽装を薬師丸に持ちかける場面、二人の掛け合いが見事だ。
必死に説得を図る三田の視線を避けようとする薬師丸は、茫然自失の体でありながら頭の中では計算を巡らせているようでもある。
窮地に陥った憧れの先輩を見捨てるのか、とんでもないものを自分で背負うのか、薬師丸の中に葛藤を見てとった三田の最後のひと押し…
「できるわよ。だって、あなた役者でしょ!」

そして、三田佳子の最大の見せ場がやってくる。
スキャンダル研究生を降ろすべきか多数決で決めようとするキャストとスタッフたちに向かって、持論を熱弁するシーンだ。
公演後の舞台の上という設定がこのシーンを盛り上げている。
「ヤスエさん、…そんなとき、女使いませんでした!?」

薬師丸ひろ子の一番の見せ場は記者会見のシーンだろう。
長い台詞を涙ながらに語るこのシーンで、薬師丸は女優としての評価を不動のものとした。
「…私のお金でジュースとハンバーガー…あの人とても喜んで…」

この後、三田佳子が三田村邦彦に真相を話す場面がある。記者会見を見て悔しかったと言う。
実際、この薬師丸ひろ子の芝居を見たとき、三田佳子はどう感じたのか聞いてみたい気がする。

役者の糧のために男と寝るとか、研究生たちが「処女」の役について議論したり、世良公則が自分を見つめるもう一人の自分に気づいて役者をやめたとか、当時としてもなかなかに臭い役者論が展開される。
やたらと女優を強調する三田と薬師丸の台詞も臭いのだが、女優がその台詞に命を与えるのだと明確に示している。
「顔をぶたないで!私、女優よなのよ!」
「女優、女優、女優、勝つか負けるかよ!」

一方で、劇中舞台劇の挿入は極めて部分的なのに原作の筋がちゃんと伝わるという構成の上手さもある。
舞台のシーンは、ほぼ、三田佳子の独壇場だ。

ライバル研究生役の高木美保は、薬師丸ひろ子よりも断然に美人だ。期待したのだが、女優として大成はしていない。昼の連ドラで一時脚光を浴びはしたが。
ところで、彼女に身代わりの偽装を話したのは誰か?
プレイボーイの三田村邦彦が高木美保にも手を出したのだろう。

kazz
NOBUさんのコメント
2023年2月8日

今晩は。コメント有難うございます。
 昨晩、相米監督作品「あ、春」を鑑賞しました。
 薬師丸さんが若き頃、ご出演された映画は少しづつ鑑賞して行こうと思っていたら、原田知世さんなど多数いらっしゃるのですね・・。
 「私をスキーに連れてって」などは、当時の中学生のガールフレンドと(見つかると先生に怒られるので)コッソリ映画館でみたなあ・・。(遠い目・・)
 では。

NOBU