旅の重さ

劇場公開日:

解説

母親との生活に疲れ、四国遍歴の旅に出た十六歳の少女の数奇な体験と、冒険をオール・ロケで詩情豊かに描く。原作は、覆面作家として話題をよんだ素九鬼子の同名小説の映画化。脚本は「約束」の石森史郎監督も同作の斎藤耕一、撮影も同作の坂本典隆。

1972年製作/90分/日本
原題または英題:Journey into solitude
配給:松竹
劇場公開日:1972年10月28日

ストーリー

「ママ、びっくりしないで、泣かないで、落着いてね。そう、わたしは旅に出たの。ただの家出じやないの、旅に出たのよ……」。十六歳の少女が、貧しい絵かきで男出入りの多い母と女ふたりの家庭や、学校生活が憂うつになり、家を飛び出した。四国遍路の白装束で四国をぐるりと廻って太平洋へ向う。宇和島で痴漢に出会い、奇妙なことにご飯をおごってもらう。少女は生まれて初めて、自然の中で太陽と土と水に溶けていく自分を満喫した。足摺岬の近くで、旅芸人・松田国太郎一座と出会い、一座に加えてもらった。少女は一座の政子と仲良くなり、二人でパンツひとつになり海に飛び込んだりして遊ぶ。一座には他に、色男役の吉蔵、竜次、光子など少女にとっては初めて知り合った人生経験豊かな人間たちである。やがて、少女は、政子に別れを告げると、政子が不意に少女の乳房を愛撫しだした。初めて経験するレスビアン。政子は、少女の一人旅の心細さを思って慰さめてやるのだった。ふたたび少女は旅をつづける。数日後、風邪をこじらせ道端に倒れてしまった。が、四十すぎの魚の行商人・木村に助けられた。木村の家に厄介になり、身体が回復するとともに少女の心には木村に対して、ほのかな思いが芽生えてきた。ある日、木村が博打で警察に放り込まれた。やがて木村が釈放された夜、少女は彼に接吻したが、木村は少女の体まで求めようとはしなかった。少女はみじめな思いで家を飛びだし、泣きながら道を走り、転び、倒れたまま号泣するのだった。思い直して家へ戻る途中、近所の娘加代が自殺したのを知った。「私には加代が自殺した原因がわかるような気がする。私もこの旅に出なければ自殺したかも知れない……」。加代が火葬された日、少女は木村の家へ戻り、夜、静かに抱かれた。不思議な安息感があった。次の日より、少女と木村の夫婦生活が始まった。そして、少女も夫といっしょに行商に出るようになった。「……ママこの生活に私は満足しているの。この生活こそ私の理想だと思っているの。この生活には何はともあれ愛があり、孤独があり、詩があるのよ」。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

1.0スカスカのアイドル映画。人生は旅でも詩でも無い。

2023年6月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

5.0隠れた傑作

2022年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

素晴らしい
前半は間延びしてるような感じも受けるが、だんだん引き込まれて行く。
高橋洋子の瑞々しさと(秋吉久美子を差し置いて、監督が選んだのも分かる)、あの時代の空気、脇の役者さん達、どれも素晴らしい。
自分探しというだけでなく、人間の永遠のテーマ・分かり合うことの難しさを、この映画は問うている。
映画はその時代の空気を閉じ込めるものだが、『時をかける少女』と同じくらいに、この映画も高橋洋子とその時代の空気を閉じ込めた傑作映画だと思う。

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takaishi2000

3.016才の旅

2020年8月6日
Androidアプリから投稿

素 九鬼子のベストセラーの映画化(1972)

その頃の四国の遍路道や自然の美しさ、石垣の漁村などを背景に 少女(高橋洋子)の旅が叙情的に描かれる

作者がこれを完成させたのは 1964年らしく、そのモノローグと物語展開に その時代の文学少女的な青くささ、みたいなものも感じた
(結婚後の執筆だけどね)

遍路道の周辺の人々の温情に甘えながらも、結局は誰かの庇護の下に入らないと生きられない16才

母とその男を嫌悪しながら、でもファザコン気味である彼女は 旅芸人の座長(三国)に好意を持ち、媚びるが冷たくされる

また その無意識の媚びは、別のトラブルを招き 座員の女の怒りをかう

奔放な政子(横山リエ)との交流や 美しい自然の中で 性の解放を夢見たりもするが、そんなものは有りはしない
(女であることの負担ばかり)

語り合えそうだった 漁村の文学少女加代(秋吉久美子)の自死

どうしようもない無力感を 魚の行商人木村(高橋悦史)に救われた形なのに、母には自ら選び取ったような自慢気な手紙を書いたりする

16才の早熟な少女の 精神と肉体のアンビバレンツ

すっかりオバサンになった私は この結末にふと
〈割れ鍋に綴じ蓋〉という諺を思い浮かべてしまいました

吉田拓郎の歌が懐かしかったです

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jarinkochie

3.5「私はこの重さを嫌ってるんじゃないの」

2020年3月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

コジキ遍路を16歳の女の子がするという、今でも、あるいは当時でも珍しいヘンテコ道中記。ホントにその辺で寝て野宿してる。このおぼこさ、垢抜けさはオーディションで蹴落とした秋吉久美子でなくてやはり正解だったのでは。三國連太郎御大のたるみまくった半裸が拝めます。

作中のセリフは、中年の凡夫の私に突き刺さるものがありました。人生そのものの旅の重さ。

「何かが肩の上にどさっとのしかかってるみたいで……重い、…重いの。これは、そう、旅の重さ……旅の重さなんだわ。でも、私はこの重さを嫌ってるんじゃない。これを感じなくなったら、おしまいとさえ思ってるの……。

……だけど…重いわ。……辛いわ…」

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filmpelonpa