大菩薩峠(1957)

劇場公開日:

解説

中里介山不滅の名作を柴英三郎と「母と子の窓」の猪俣勝人が脚色し、「暴れん坊街道」の内田吐夢が監督した。撮影は「雨の花笠」の三木滋人。主な出演者は「地獄岬の復讐」の片岡千恵蔵、「ゆうれい船 (前篇)」「ゆうれい船 (後篇)」の中村錦之助、「股旅男八景 殿さま鴉」の長谷川裕見子、「鞍馬天狗 御用盗異聞」の月形龍之介。ほかに、大河内傳次郎、岸井明、浦里はるみ、丘さとみ、波島進、加藤嘉、左卜全、薄田研二、山形勲ら。東映スコープ、色彩はアグファカラー。

1957年製作/119分/日本
配給:東映
劇場公開日:1957年7月13日

あらすじ

剣をとっては天下無敵の“音なしの構え”の机竜之助だがの心の底には絶えず自分をさえ信じ得ぬ虚無の嵐が吹きまくっていた。その風の渦まくところに魔剣がひらめく。大菩薩峠で、何の理由もなく巡礼の老爺を斬捨てたのも彼にとっては一陣の突風のなせる業でしかなかった。だが、過る日の奉納試合に宇津木文之丞を討ち果した時だけは、その剣に女の妄執がこもっていた。女の名はお浜、文之丞の許婚である。--それから四年、お浜を連れて江戸に出た竜之助には、一子郁太郎が生れていたが、剣の深淵に混迷する彼は血に飢え、魔心に狂い、地獄の業火にのたうちまわっていた。その頃、文之丞の弟兵馬は兄の仇を討つべく、島田虎之助の道場で武芸を磨いていた。江戸広しといえども竜之助の“音無しの構え”を破り得るのは島田ただ一人。兵馬はふとした機会にお松という娘と知り合いお互いに愛情を抱くようになったが、彼女こそ、あの大菩薩峠で竜之助に殺された巡礼の孫娘であった。一方、竜之助は魔剣に魅せられお浜をその刃にかけてしまった。そしてただ斬ることのみで新徴組に加担し京に上った竜之助の脳裡に去来するのは、これまで殺した数々の人の幻--ついに狂気となってさまよい出た彼の辿った道筋には無惨に斬られた死体が点々と転がっていた。やっと正気に戻ったところは大和路。そこで彼はお浜と生写しの女、お豊に出会った。竜之助の空虚な心に火がともりかけたが、お豊は彼と江戸に向う日、彼女に横恋慕する男、金蔵によってかどわかされた。いまは、善も悪もすべて虚空の彼方に追いやった竜之助は、蜂起に失敗した天誅組の中に身をおいた。そして、残党狩りの追手の火薬に眼を焼かれ盲いになった彼だったが、彼を包囲した追手の群れを次々と倒す“音なしの構え”はいよいよ冴えていった--。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0時代劇のスタンダードとは何か それを確認するぐらいにしか21世紀に本作を観る意味や意義を感じることができませんでした

2025年4月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

大菩薩峠1957

主演、片岡千恵蔵、東映カラー作品
大菩薩峠は41巻もある超巨大長編時代小説として有名です
戦前に新聞小説として28年も連載が続いたそうです
映画化も戦前に日活版が製作されたのを最初に戦後な東映版渡辺邦男監督版、内田吐夢監督版の二つ、さらに市川雷蔵主演の大映版、それに東宝岡本喜八版と全部で5種類もあるそうです
つまり赤穂浪士次ぐ程の時代劇の人気コンテンツというわけです

本作は東映内田吐夢監督版の第一部です

時は幕末、場所は江戸を西に隔たる30里、武州と甲州の境にある大菩薩峠から始まります
そして江戸、京都に移って行き、ラストシーンは明治維新のさきがけの戦い、大和十津川での天誅組の乱の掃討戦で終わります

はっきり言って、物語はつまりません、大河小説の起承転結の起の部分だけということもありますが、かといってこの超巨大大河小説全体を通してみたところで一体この物語が何だったのか、大きな流れがあるわけでも、主題が明らかとなり輻輳した物語が最後の最後に収斂していくような快感もカタルシスも感動なく、だらだらと収束していくあてもなく進行するのみなのです、しかも未完

一応は机龍之介を兄の仇とする中村錦之助 (萬屋錦之介)が演じる宇津木兵馬の敵討ちの物語であるのは確かなのですが・・・

いかな巨匠内田吐夢監督にしても面白い映画にはとてもなりません
血槍富士とは大違いです
それでも、最後まで我慢して見終わる事ができたのは、さすがは内田吐夢監督というべきかと思います
見所は二つ、後半の京都での新撰組登場シーン、終盤の天誅組の乱のシーン
特に天誅組の乱が映像になっているのは本作以外には他に観た事がありません

時代劇が絶滅しそうな昨今、時代劇の全盛期はどうであったのか
時代劇のスタンダードとは何か
それを確認するぐらいにしか21世紀に本作を観る意味や意義を感じることができませんでした

映画は第二部、完結編へと続きますが、かなり惰性がないと観るのはしんどいと思えます
第二部ではお話は大和十津川から紀伊竜神、伊勢、浜松、掛川、清水港、甲州へと移って行きます

第三部の完結編まで見通して思うのは内田吐夢監督の意図は主人公 机龍之介はもしかしたら戦前の大日本帝国のことであると演出されていると思えてきました
斬りたいから斬った
そんな男が結局 敗戦という失明の境遇となる
これからどのように生きて流れていくのか?
即ち机龍之介をして過去の反省と
彼の捨てた息子郁太郎を日本の将来になぞらえてこれからの想いをめぐらせる
そういう映画だったのかもしれません

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あき240

3.5人間の動物性

2024年9月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

何を見せられているのだろう。
見てはいけないモノを見せられている感覚。
なんという男。こんな男がいるのか。
剣に生きる男が、風の流れるままに剣をふるう。今までの武士像とは随分違い、そこに人間性から離れた野生を感じ、虚無と本来の人間の動物性を感じる。
片岡千恵蔵の静かな魔心の演技が恐ろしい。
まさに元祖ダークヒーロー。

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カメ

1.5タイトルなし(ネタバレ)

2024年1月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ