「このような作戦が実施されていたなんて…」太平洋奇跡の作戦 キスカ しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
このような作戦が実施されていたなんて…
DVDで鑑賞。
太平洋戦争が泥沼の消耗戦に突入していた昭和18年。アリューシャン列島のキスカ島に孤立した守備隊約5000人を無血救出したと云う奇跡の実話を映画化した東宝戦記大作。
豪華男優陣が総出演。三船敏郎を筆頭に、山村聡、志村喬、藤田進、佐藤允、田崎潤などお馴染みの顔が勢揃い。胸が高鳴る面子に大興奮。女っ気ゼロの男のドラマを堪能した。
アッツ島守備隊が玉砕し、米軍の包囲網は着実にキスカ島に迫っていた。日々砲爆撃が島を襲う。彼らに残された道は総員玉砕しかないのか。キスカ島守備隊の運命や如何に。
ミッドウェイ海戦が徹底的敗北を喫した今、アッツ島だけでなくキスカまで見殺しには出来ない。白熱の会議の末に海軍軍令部が下した決断とは…まさかの「全員救出せよ」。
救出作戦の指揮を執るために召集されたのは現場叩き上げの大村少将。堅実で冷静、無意味な感情論は意に介さず理論的思考と歴戦の経験に裏打ちされた指揮にしびれた。
濃霧に紛れて10隻ほどの艦艇が一列縦隊を形成し、精密な操艦でキスカ島に向かう。キスカ島周囲の米軍警戒網を突破しなければならない。緊迫感漲る演出に手に汗握った。
特に岩礁と岩礁の間の水路を進むシーンにハラハラした。大村司令官の指揮の下、岩スレスレの操艦で進む第一水雷戦隊を描く迫真の円谷特撮の素晴らしさたるや、本作の白眉だ。
キスカ島守備隊のドラマも良い。果たして助けは来るのか来ないのか。様々な感情が渦巻く中、濃霧から救出部隊の艦影が顔を出した瞬間の歓喜に、こちらまで嬉しくなった。
よもやこのような人道的作戦が決行されていようとは思いもよらなかった。戦争の不思議な一面を見せられた気がする。
海軍上層部の面子のための作戦と云う見方ももちろん出来ようが、それでも本作戦の人道性の高さは評価されるべきだ。
しかしながら文頭で記したとおり、これは昭和18年の出来事である。救出された兵士たちはおそらく、また別の戦地へ送られたと考えられる。終戦まで生き残れただろうか。
助けて終わりではないことに思い当たり、複雑な余韻を抱えるに至った。彼らのその後に想いを馳せずにいられない。一度は生還した幸運が続いていて欲しいが、果たして…
[以降の鑑賞記録]
2025/08/06:DVD
※修正(2025/08/06)