「任侠に甘い幻想を懐いてはいけない」ダイナマイトどんどん TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
任侠に甘い幻想を懐いてはいけない
徳間書店が買収した新生大映が製作し、ヤクザ映画の東映が配給した作品。
子供の頃、タイアップした栄養ドリンクのCMで菅原文太がタイトルを絶叫していたのが、今なお耳朶に残る。
監督の岡本喜八は幅広い作風で有名。
先日やはりTVで放送されたばかりの東宝版『日本のいちばん長い日』(1967)とのギャップに驚かされるが、原作が火野葦平なのにはもっとびっくり。
終戦の五年後、抗争を繰り返す北九州の暴力団関係者を集め、暴力でなく野球で決着をつけようというストーリーの任侠コメディー。
その方が民主主義的だし健全だしね。
でも、現実はそんなに生やさしくない。
映画の舞台となった九州の暴力団は時代が平成になっても過激な抗争を繰り返し、揚げ句、民間人を標的にした任侠とは名ばかりのテロ同然の殺人も辞さないほど尖鋭化。
責任を問われた組織のトップに極刑の判決が下ると、関係者に恫喝まがいの棄てセリフまで浴びせる始末。
近年、某外食チェーンの社長射殺事件にも北九州の反社会勢力が関与していたことが発覚。京都の裁判所も一時、厳戒態勢が敷かれ戦々恐々としていた。
本作も「昔のコメディーだから」と、割り切って楽しめる気分じゃなかった。
巨漢俳優・大前均演じる強面の主審に代わり登場する草野大悟の情けないキャラクターに、何故か心が和む。
BS松竹東急にて初視聴。
どうせなら、岡本喜八監督の反戦作品を放送して。
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