曽根崎心中(1978)のレビュー・感想・評価
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心中物と分かっていたけど
時間を逆戻りしての物語の展開が、
とても、今風で良かった。
女郎家の様子がよくわかりました。
ラストシーンは、ちょっと。。。 きついかも。
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死への欲動
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人は生きることにも死ぬことにも意地が必要だ。希望を無くして死を選ぶ一方で、自らの名誉や尊厳の為に死を欲する人々がいる。
近松門左衛門の原作のこの心中物語は、色恋のために命を懸けるというよりも、名誉の為に自死を選ぶ男女を描いている。映画は、この二人の男女が、死に向かって迷わず進んでいく様子を、形式的な台詞とアクションで淡々と描いている。ここで淡々と言うのは、平板であるとか、抑揚がないということではない。二人の激しい死への欲動は、男と女それぞれの危うい立場から必然的に生じていることへの説得力が強いのだ。その説得力の強さゆえに、観客は二人が死へと近づいていく様子を、淡々と受け止めることが出来るのだろう。
騙されて名誉を失った徳兵衛への嫌疑が晴れるのは、二人が遊郭を出奔した後になる。真実を知った彼の叔父が、観客に代わって、騙した九平次を打擲するが、お初と徳兵衛の命は救われない。
いままで一直線に死へ向かっていた物語は、ここで初めて、二人を死へと追いやった周囲の人物や、社会状況へ視線を向け直すことになる。淡々とした流れが、ここで一気に逆流するのである。この逆流こそが、観客が体験する初めての葛藤ではないだろうか。ただし、この葛藤はもはやわずかな嘆息も受け入れないほどに固く大きい。だからこそ、二人の死を最後は静かに受け入れることができるではないだろうか。
人物の細々とした葛藤をあえて排した描写が、二人の死を納得できるものにしている。
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