ソナチネのレビュー・感想・評価
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それまでの北野作品の総まとめ的作品
総合80点 ( ストーリー:75点|キャスト:75点|演出:85点|ビジュアル:75点|音楽:75点 )
突然の暴力がこれがこの世界での当然のことだといわんばかりにあまりに普通に出現する。彼らが進む道の前にちょっとした障壁があったりちょっと気に入らないやつがいれば、彼らにはその排除方法は一つしかない。殴り、刺し、撃ち、爆破し、全ての事柄は何のためらいもない暴力でのみ解決がなされる。そこには人の痛みを感じる心や生命を奪い奪われる恐怖がなくて、本能だけで生きる爬虫類か両生類のごとくに荒んだ道をただ歩み続ける。海に沈められる男が死にかけていても、彼らにはそれは重大ごとではない。何かが起こる前の張りつめた緊張感のある静寂と、その直後で傷つき死にゆく者たちとの対比を描く演出が際立つ。
そのような刹那的な生き方に疲れていたのか、彼らに偶然に訪れた南国の浜辺での生活の、子供の様なはしゃぎぶりがまた大きな対比をなしている。たわいもない無邪気さを見せる彼らに、人間性を取り戻した姿を垣間見ることが出来る。そして一時の安息の日々が終わりを告げ、生き方を変えられぬままにまたヤクザの世界に戻っていく姿に、哀愁や物悲しさと共に哲学的な美しさを感じ取り、全てが浄化されていって何も残らない儚さと虚しさの余韻を残してくれた。
北野監督の第一作「その男、凶暴につき」と似たような社会に溶け込めない人々の世界の延長線軸にあるし、虚しさや悲しみに満ちた雰囲気は他の北野作品と共通している。しかし静寂と暴力、また安息と暴力の対比が良く出来ているし、結末の悲劇的浄化が美しい。その意味で一段水準が高いし、ビートたけしというお笑い芸人に何の知識も偏見もなかった欧州でこの作品のもつ本質が素直に評価されたのも理解できる。
難解すぎる
北野映画の初期の傑作と言われている「ソナチネ」。
90分見終えて確かに心揺さぶられるものはあるのだが、難解すぎて理解はできない。
見て語って知的になった気分になるための映画かも。
しかし何で任侠映画しか撮らないんだろうか。
緊迫感を煽る久石譲の音楽は素晴らしい。
あまりにも美しいヤクザの夏休み
『ヤクザの夏休みin 沖縄』的な映画。
自身の親分の兄弟分の組の揉め事を手打ちにするため主人公村井(ビートたけし)の組が沖縄に出向く。
しかし村井は親分にはめられており、兄貴分の組とともに標的とされる。
それに気づいた村井は復讐を図る。
という単純なストーリーだが、妙に心に残る。
それはこの映画があらゆる人にとって懐かしい『夏休み』を描いているからではないだろうか?
くだらないことではしゃげたり、海や自然を美しく切り取ったり、花火で遊んだり、たまたまその夏限りの友達が出来たり…
そんな夏休みの郷愁が観客に余韻を残しているんじゃないだろうか。
しかし、夏休みは必ず終わる訳で、修羅の道である極道的日常に戻されるのです。
適度な笑いと暴力、郷愁とダンディズム…本当に素晴らしい!!
個人的に良次とケンが夏休みを一緒に過ごすことで、少しずつ仲良くなり、気が付けば親友の様になるところが微笑ましくて、微笑ましくて、たまらんです。
(ケンが撃たれそうな時に逃げた良次が少し切なかった…)
あとどうでもいいが、良次役の勝村政信が小出恵介に似てると思いますがいかがでしょう?
天才の作り方
先ほどゴダールの『気狂いピエロ』を見終わった。
もう類似点山ほど見つかる。北野監督は『ソナチネ』撮影前に『気狂いピエロ』見ていないとインタビューで語り、今までの既存の作品の要素を徹底的に自身、スタッフから排除させたと書いてあったが、もし『気狂いピエロ』を見てなくてこんなに沢山の類似点があるのだとしたらかなりの天才かもしくは予知能力(撮影後『気狂いピエロを見る自分を予知)の持ち主だろう。ありえない。30年来の北野フリーク、キタニスト、たけしイズムの信仰者である自分であるからこそ敢えて言う。ありえない。北野武氏はもちろん天賦の才能を持った人であることは疑いようのない事実であるのと同時に自身を天才に見せることの天才であることを観察者である自分は多くの氏のインタビューを聞き,読んで実感している。それは自身の映画をピカソの絵に置き換えて『青の時代』『赤の時代』などと呼ぶのがその主な一例である。しかし既存の素晴らしい作品を引用してアレンジし、オリジナルに仕立て上げるのも天才の条件(例えばタランティーノ)であり、北野監督が初めて国際的な評価を得たこの作品は明らかに非常に『気狂いピエロ』色の強い作品ではあるがオリジナリティに溢れた北野監督の作家性の強い作品にはなっていのが素晴らしい。それではちなみに北野作品に見る『気狂いピエロ』とのいくつかの共通点、意識しているであろう点を紹介する。
1.ソナチネの仮題が『沖縄ピエロ』であった
2.最初のオープニングシーンの字がタイトルの出し方
まぁここら辺はスタッフが敢えてそうしたのかもしれない。
3.崖で車が爆破されるシーン。
4.海辺のシーンの多用(砂浜)
5.草むらの中から顔を出すシーン(これは3-4×10月)
6.最後に主人公が自殺
(その男凶暴につき、3-4×10月、ソナチネ)
まぁ上げだしたらきりがないのだが他であまりにもこの事を描いた北野映画評がないのでここに書いておきます。以上。
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