千利休 本覺坊遺文のレビュー・感想・評価
全2件を表示
熊井版千利休
熊井啓が利休を描いたのは『お吟さま』(1978)以来となるんだな。まぁ、こちらの作品は利休の死の謎解きのようなものがテーマであるから『利休』(勅使河原宏、1989)と同じような雰囲気。ともに利休没後400年記念のための映画だったらしい。この利休対決では若干こちらの方が優勢だったようだけど、キネ旬の主演男優賞は三國利休の勝ちだった・・・
茶人として全うするには自刃しなければならない?などと結論づけた有楽斎の生き様。最後のシーンでは、割腹する格好で死んでゆく。この姿の鬼気迫る演技は最高。全体的には静かなストーリーであり、利休の亡霊(?)とともに山奥でひっそり暮らす本覺坊がメインである点が弱いのだろうか。
織部釉は好き
出だしから格調高かった。ベネチアはこういうの好みなんだぁ。でも、ヨーロッパの人々に、本当にニッポンの侘び寂びが伝わっているのだろうか。ちょっと疑問…。
本覚坊にとって、千利休の魂は死んでいない。日々突然現れる師匠(幽霊?夢?マボロシ?)と、言葉を交わす。たとえ幻想だとしても、本覚坊には利休が必要なのだろう。彼にとって、利休の死は過ぎ去った過去ではないのだ。
山上宗ニの名前は、初めて知った。映画でも激しい人だったが、調べたら実際に荒ぶる人だったらしい。でも、利休についていろいろ書き残していて、後世役立っているそうだ。ま、映画の中では、声がでかいおっさんであった。
狭い茶室の中で、喧々諤々の三人の男たち。宗二も利休も町人だが、古田織部は武士。なんだけど、加藤剛だと優しげで、三船敏郎の方がよほど武士っぽい。しかし、なぜ死と茶の湯が関係しているのだろう。茶道を突き詰めると、哲学に発展するのか。いくら戦国の世を生きたからといって、死に近付きすぎでは? 花と短刀が飾られてる部屋で、キリキリしながら茶が飲めるかい! 僕はイヤだ!! ロイヤルミルクティーをお願いね。
萬屋錦之介は、やはり歌舞伎の声だと思った。三船敏郎とのツーショットは、大変豪華であった。いい時代だったなあ。
キャストに女性が一人もいない、とても珍しい作品。
BS日テレ 特選時代劇の放送にて。
全2件を表示