劇場公開日 1989年10月7日

「佗茶を権勢の場に持ち込んでしまった矛盾を…」千利休 本覺坊遺文 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0佗茶を権勢の場に持ち込んでしまった矛盾を…

2022年10月19日
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1989年の劇場公開時は、
勅使河原監督の「利休」との同時公開が
話題になっていた。
「利休」のキャッチコピーは
「美は、ゆるがない。」だったが、
逆に美に溺れた印象があり、
この「本覺坊…」の方が圧倒的に面白かった
記憶がある。
因みにキネマ旬報では、同じ年に
「本覚坊…」が第3位、
「利休」が第7位だった。

今回の鑑賞はCMの入る民放放映
でのものだったので
短縮版になっていないか心配したが、
録画機でCMを除去したら
ノーカット版だったことが分かり、
安堵して鑑賞することが出来た。
しかし、33年ぶりに改めて鑑賞すると、
この作品も「利休」に負けず劣らず
様式美にこだわった作品のように思えた。

この映画、ミステリー仕立てで
映像世界へ引き付けられるものの、
茶道の“さ”の字も知らない小生には、
三人の茶人の示し合わせての
命を懸けた権力への諍いの心理は
想像の域を超える。
劇場公開時に購入したパンフレットでは、
熊井啓監督の
「切腹は佗茶を権勢の場や戦場に
持ち込んでしまった利休が、
その矛盾を解決するために、
自ら選択した潔い行為であった」
とのコメントが一番腑に落ちた。

KENZO一級建築士事務所