劇場公開日 1962年9月16日

「スリリングな会話劇❗️日本映画屈指の名作📽️」切腹 minavoさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 スリリングな会話劇❗️日本映画屈指の名作📽️

2025年10月9日
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鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

ドキドキ

15年前に観たことないの?って教えてもらってからレンタルDVDやら配信サービスやら、時代によって何度も観てきた、生涯ベストムービーを35mmフィルムで初スクリーン鑑賞。

何度も観て知ってるはずが、初めて観たように感じるのはスクリーンで観る情報量の違いなのか!会話劇の質の高さに改めて感動です。

✴️未見の方のために少しだけご紹介します。

映画の中ではあまり多くは語られないが、話のきっかけとしてモデルにしたのは、1620年元豊臣家臣の福島正則の安芸広島のお家取り潰し(徳川家がお城の雨漏りを直したことにいちゃもんつけて追い詰めた)により、浪人が大量に発生したことがモチーフだと思われる。

その頃、江戸でも食うに困った浪人が武家屋敷の軒先で切腹させてくれと願い出て、ゆすりたかりを行うことが横行していた。

三國連太郎演じる家老のいる、赤備え(赤い甲冑)で知られる井伊直政を先祖に持つ井伊家にも、仲代達矢演じる、元安芸広島福島家家臣の年老いた浪人が切腹を所望して訪ねてきた。

そこで、三國連太郎の口から、数ヶ月前にも若い浪人が同じく訪ねてきて、普通ならいくばくかの金を与えて追い払うところ、本当に切腹をさせたという話をし始める。

という冒頭。

「切腹」というタイトルもインパクトありますが、ボクの祖母の幼少期の明治時代の家屋には四畳間があり、「四」は「死」ということで、「切腹」専用の部屋があったことを聞かされたことがあります。今は信じられない話ですが、日本も約150年前にはそんなだったみたいですよ。

1962年公開、武士社会の不条理さを描き、カンヌでも審査員特別賞。時代劇ながら海外でも高い評価を今だに受け続ける傑作。

最近の言葉でいうと、ワンシチュエーションドラマのサイコホラー、サスペンス。

主人公、仲代達矢の真の目的が徐々に明かされ、それにより、逆にジリジリと追い詰められていく三國連太郎。二人の息を呑むほどスリリングな会話劇が繰り広げられます。

ラストの決闘シーンは真剣を使ったというコンプラ無視のリアリティ。また、冒頭からラストまでの緊迫感を持続させる、武満徹による琵琶の劇伴。

パワーゲームに敗れて、土地を追い出され全てを無くした難民が、ささやかな幸せを持つことも許されず、テロに走る。体制を維持するためには不都合なことは公文書も改変、捏造し、部下の犠牲すらも闇に葬る。これが社会の普遍性とは思いたくないが、現代でも全く変わらない人の世でござるよ。

ちょっと前にSNSで映画「セブン」未見の人がリバイバルでの初鑑賞ということをみんながうらやましがる現象が起こってましたが、この映画の鑑賞体験もそんな感じ、いやそれ以上かと。

武士として人として、いかに生きるか、いかに死ぬか?

時代を超えて問いかけてくる、日本映画屈指の名作です。

この映画、観ないで死ぬのはもったいない!

あまり機会はありませんが、是非スクリーンで観ていただきたい作品です。

minavo
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