「平和を粗末にしちゃいけない」世界大戦争 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
平和を粗末にしちゃいけない
DVDで2回目の鑑賞。
「連合艦隊」などを手掛けた松林宗恵監督と特撮の神様・円谷英二特技監督の初顔合わせで、世界核戦争による人類滅亡を市井の人々の視点から描いた人間ドラマ大作。
東西冷戦による緊張状態が日常としてあった当時、第三次世界大戦、核戦争の危機がすぐそこに転がっており、張り詰めた空気感の中で人々は暮らしていたのだと想像します。
太平洋戦争の敗戦を経、平和国家への道を歩み出して間も無い日本の国民は、「戦争とは残酷で愚かしい行為である」とそれ以上無いほど身に染みて理解している民族でしょう。
よって本作は日本だからこそつくり得た映画だと思うし、核戦争による人類滅亡の危機を、日常を営む無后の人々の視点から描いていることに強い意義があると感じました。
フランキー堺演じるハイヤー運転手の家族は、贅沢は出来ないながらも幸せに暮らしていました。些細な出来事に喜びを感じ、将来への希望を胸にありふれた日常を生きていく。
それが突如、理不尽にも許されなくなってしまう。何故幸せな生活を奪われなければいけないのか。いったい我々が何をしたと云うのか。奪われたかけがえの無い日常が切ない。
戦争は、若い恋人たちが交わす純粋な愛さえも不条理に引き裂いていきました。なんて残酷なのか。決して許されて良いものではないのに、何故戦争は起こってしまうのだろう。
戦争への激しい怒りをフランキー堺らが迫真の演技で訴えていました。そして迎えた最後の晩餐。日常が崩壊してもなお普通の暮らしを通そうとした一家の最後の抵抗が切ない。
核ミサイルの直撃によって火の海になる東京。哀切極まり無い壮絶なラスト・シーンを熟練の円谷特撮が容赦無い描写で見せつけ、その迫力と凄絶さに圧倒されました。
このような愚かしい行為が実際に起こらないようにしなければなりません。ですが昨今の世界情勢はそれを許すことの出来ないところまで差し掛かっているように感じます。
緊迫した情勢は形を変えて今も私たちの傍にあると思うと恐ろしくなりました。「平和を粗末にしちゃいけねぇ」。主人公のこのセリフを噛み締めなければならないと思いました。
※修正(2023/10/16)