青春の殺人者のレビュー・感想・評価
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こわっ。
成田闘争が起きている時代背景で、当時の空気感がなんと無く伝わる。成田空港に隣接する当時からある反対派の活動拠点に何年か前に行ったことがあるが、そに時のことをふと思い出した。
母親を殺すシーンが、すごい演劇を観ているみたい。でも、何度も刺した後の死体を見て、驚く主人公の演技はちょっとわざとらしいかなぁ。終始、演技が棒読みにしか聞こえなかった…。
ただ、ストーリー的にはどうなるのかハラハラして面白かった。実際にあった話しが元になっているらしいので、調べたらだいぶ実際の話しとは違いそう。主人公も大学生だったみたいだし。
犯人は死刑判決になっているけど、まだ執行されずに服役しているらしい。調べたけど、死刑囚の死刑執行って、どうやって決まってるかよくわからないんだ…。もっと後に死刑が確定したのに執行された人もいるし。
明日死刑が執行されるかもしれないという気持ちで、30年近く刑務所で生きてるんだ。とか考えてしまった。
学生運動で血が騒いでいた頃の事件?
実際の事件、佐々木哲也事件を基にしているが、二人の殺人については、本人は否認していたらしい。成田空港の建設反対運動が出てくる1976年の作品
主人公の父母は苦労して身一つからタイヤ工場を立ち上げ、贅沢一つしないで息子を育てている。息子は真面目だが、風俗に勤めていたケイ子と付き合い、深い関係になって歯車が狂いだす。
ここでのケイ子(原田美枝子)は、はすっぱな感じでなく、あどけなく綺麗な顔立ち、豊満な体つきをしている。(当時17歳で裸体を晒すのが考えられない)その時の感情に素直で、深い考えなどなく相手に流されやすいようなキャラクター。それに対して順(水谷豊)は、頑固で、無計画、直情的で、甘ったれ、母に甘やかされて育ったかのよう。
なぜ、父親を殺したのか? いつも父親は与えていたものを取り返す。
自分は、ケイ子が素晴らしい伴侶だと思ったら、イチジクの木を盗んで食べたという嘘をついたり、母親が招きこんだ男に貞操を破られたことが発覚。父に好奇心で自ら引き込んだのではと言われ、自分が大切に思っていたものを取り上げられたと思い、逆上、めった刺しをして殺したように描かれていた。
父親を殺した後の母親との争いが狂気。父殺しを発見して、息子を責めない、自分はこれを待っていたような気がすると。息子の自首を思いとどまらせ、死体の処理を謀議、その後の逃亡生活に夢を抱いたかと思いきや、死体となった夫にやさしい感情になったり、息子が最初から両親を殺害するつもりだったかと疑って殺そうとしたり、自分を殺してと哀願したり。市原悦子ゆえにその狂乱ぶりが可能だった。
その後、順とケイ子の絡み、死体遺棄、スナックに戻っての騒動、自殺騒ぎの経緯は、最初はケイ子にばれないように、巻き添えを食わせないようにと考えていたが、徐々にケイ子がいたから自分も影響を受けて、刹那的、衝動的に変わっていって、父や母が築いてきた幸せと自分の未来を、奪ってしまったことに気づいたという描き方だった。
事件は理由なき殺人と世間を賑わしたようだ。この映画もインパクト大。学生運動は、大人やその時代が押し付けてくる価値観や体制に対して若者が抗ったもの。そのエネルギーの向かい方が、自分の親に向けられた時、こんな事件が起こってしまうというメッセージか。確かにこの頃、親殺しが、ニュースの話題となっていた記憶がある。
最後、トラックの荷台に乗って、一人自分の犯した罪を呆然と見ている姿でエンディング。学生運動と同じく、何も得られずを表している。
なにもかも濃い
960年代の青春は自分も肌感覚ではわからない。
この主人公の父は苦労人で
自分のような苦労をさせたくないとの思いから
正直たいして能のない息子にも店を与えてやり、
60年代としてはかなり過保護だったと想像する。
この当時は、大変な思いで学校に行かせているというのに
学生は徒党を組んでただ騒いで遊んでるばかりだという
大人の認識だったのだろう。
それくらいなら一円でも稼いだ方がいい、というのは
特別厳しいわけでもなく標準の認識だったのだ。
しかし息子にとっては自分のやりたいことを取り上げられて
鬱屈する日々。
甘やかされて育ってるだけに
思い通りにいかないことが耐えられない。
おそらくはこの恋人が童貞を失った相手で
それだけ執着も強かった。
恋人でも友人でも思春期の自分の社会を
否定する大人には激しく反発するものである。
その衝動のまま行動してしまったが
根っこから親を憎んでいるわけでもないし
親の庇護なしでは何もできないと
徐々にわかってきても後の祭り。
映画最初の傘のくだりに関係が集約されている。
壊れた傘を捨てようとする母に
父は直せば使えるだろうもったいないと止め、
その壊れた傘を持って母は出かけていく。
貧乏くさいとも思えるそんな両親が
息子にとってはダサくて恥ずかしい存在であるに違いない。
そうやって倹約して自分を育ててるのだとわかっていても、である。
それにしてもこの映画に登場する女たちは
直面する現実に対して
適応度合いが抜群で男たちは置いてけぼりではないか。
監督としても女ってよくわからないなという
認識だったんじゃなかろうか。
そこが逞しくほっとできるのが恋人で
おぞましく奇異にうつるのが母親。
市原悦子との攻防戦は夢に出そうなトラウマレベルだ。
まさに怪演。
内容は面白いし、考えさせられる
実際の事件をもとに書かれた中上健次の短編小説を映画化した作品。息子を溺愛していたために過保護に育てあげられた青年・・・そりゃ20歳も過ぎれば親子の行き違いなんていくらでも出てくるわなぁ。
発作的に店をたたむといった行動や両親の死体を海に捨てるといった行動。さすがに犯罪心理学まではわからないが、わからない行動があるために犯罪は起こるんだと思う。結局、親がいなくなれば、支えがなくなり、自分でも何をすればいいのかわからないといった主人公だったのだろう。イチヂクの木があったかどうか、そんな妄想めいたことも性格の一部なんだろうけど、おかげで何も信じられなくなったんだろうな。ふと思い出した両親のアイスクリーム売りの姿が妙に生々しく感じられた。
市原悦子と水谷豊のやりとりが凄い!近親相姦を迫る市原は過剰な演劇っぽく、白々しくも感じられるが包丁を突き立てられ「痛い!痛い!」と呻くところがリアルだった。
若い原田美枝子の裸体がまぶしくまぶたに焼き付くくらい。だけど、一本調子のセリフ回しは下手くそとしか言いようがない・・・
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自宅(CS放送)にて鑑賞。エンドロールでご贔屓の中上健次が原作だと知るが原作とはかなり異なる仕上がり。全篇を通し文法を無視した感覚的な構成に加え、粗い演出が目立つ中、殺人シーンのみ妙に艶かしく説得力有り。主演水谷豊の演技はかなり微妙な上、ヒロイン原田美枝子(当時18歳)に至ってはまるで学芸会さながらだが、溌剌、あっけらかんとした若さが救いか。当時、衝撃的だった筈の内容も今では在り来たりで、時代性を感ず。全体を見渡すと市原悦子の怪演が際立ち、内容とは裏腹な雰囲気の音楽(ゴダイゴ)が印象的。50/100点。
。鑑賞日:2011年5月25日(水)
普遍的評価と時代性で動く評価
市川悦子さんの追悼の意味で、公開時から初めてとなる再見。当時でも彼女のセリフに笑いも起きていて、実に芸達者な女優と思ったことを思い出すが、改めて今回見ると、母親の息子に対する近親相姦的愛情を滴り落ちらせる怪演。この過剰にも見える演技が、息子の母殺しに説得力を与えてるところに改めて凄さを感じさせた。
当時、圧倒的な印象を与えられた原田美枝子さんの魅惑的演技は、今見ても全くそのまま色あせず魅力的。そう、この映画は原田美枝子看板の映画である、との印象は当時と全く変わらず。
しかし当時強烈に覚えた、従来と異なる新しい傑作映画との認識に関しては、今回見たところ、相当に消失していた。そういう時代であったいうことか、壮絶な両親殺しや自分の店燃やしも、家庭・土着・しがらみや過去との決別する未来志向と捉え、ゴダイゴによる音楽も伴って新しいと共感していた部分が大であった気がする。
今見ると、主人公の身勝手さや幼さや優柔不断さが余りに目につき、学生運動はもとより中途半端な若人の自己主張に、ゴジさんは批判的、もしくは己達のダメさ加減に超自覚的である様に思われた。
ラストのトラックに乗り込んでの移動も、当時感じた颯爽というよりは、他人任せ運頼みで、彼女も含めた親の与えられた環境からのやっとの思いのかろうじての脱出に思える。まあ、単純に肯定はしない、諧謔性伴う単純さを許さない知性は、買いとは思えた。
面白かった
大昔にレンタルビデオで見ていつかスクリーンで見たいと思っていてようやくシネウィンドの『原田美枝子』特集で見れた。
水谷豊が父親を刺殺して服や手が血だらけになっていて、早く洗って欲しいと思っていたのだが、その後、死体を風呂場に運んだり、母親と殺し合いになる際にもっと血だらけになるから全然その必要がなかった。
市原悦子が舞台劇みたいにすごいセリフ量で、また感情が目まぐるしく変化して、あげくに何度刺しても痛がるばかりでなかなか死なないのがすごく恐ろしかった。
また、水谷豊が包丁でリストカットする際、血が出るものの「こんなんじゃ死なねえ、いてえだけだよ~」と叫ぶところなど、悲惨なのに、変にリアルでどこかおかしい感じがした。
原田美枝子のくったくのない笑顔が素晴らしくキュートだった。レイプみたいなセックスばかりしていて可哀想だった。もっと大事にしてあげて欲しい。
以前に見た時に、道路を検問している機動隊に「親を殺した」と自首するのに全然相手にされないところは強く印象に残っていて、やっぱりすごく面白い場面だった。
お父さんが、戦争経験者だったり、学生運動や成田闘争が賑やかであったりする一方で、海水浴で気楽に遊んだりする若者の様子も描かれ、時代背景が自然に感じられた。
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