「普遍的評価と時代性で動く評価」青春の殺人者 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
普遍的評価と時代性で動く評価
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市川悦子さんの追悼の意味で、公開時から初めてとなる再見。当時でも彼女のセリフに笑いも起きていて、実に芸達者な女優と思ったことを思い出すが、改めて今回見ると、母親の息子に対する近親相姦的愛情を滴り落ちらせる怪演。この過剰にも見える演技が、息子の母殺しに説得力を与えてるところに改めて凄さを感じさせた。
当時、圧倒的な印象を与えられた原田美枝子さんの魅惑的演技は、今見ても全くそのまま色あせず魅力的。そう、この映画は原田美枝子看板の映画である、との印象は当時と全く変わらず。
しかし当時強烈に覚えた、従来と異なる新しい傑作映画との認識に関しては、今回見たところ、相当に消失していた。そういう時代であったいうことか、壮絶な両親殺しや自分の店燃やしも、家庭・土着・しがらみや過去との決別する未来志向と捉え、ゴダイゴによる音楽も伴って新しいと共感していた部分が大であった気がする。
今見ると、主人公の身勝手さや幼さや優柔不断さが余りに目につき、学生運動はもとより中途半端な若人の自己主張に、ゴジさんは批判的、もしくは己達のダメさ加減に超自覚的である様に思われた。
ラストのトラックに乗り込んでの移動も、当時感じた颯爽というよりは、他人任せ運頼みで、彼女も含めた親の与えられた環境からのやっとの思いのかろうじての脱出に思える。まあ、単純に肯定はしない、諧謔性伴う単純さを許さない知性は、買いとは思えた。
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