「泣かずに観られる術がない。昔も今も。」砂の器 なかじwithみゆさんの映画レビュー(感想・評価)
泣かずに観られる術がない。昔も今も。
中学生の時、クラスメイトと(今はなき松竹二番館)横浜大勝館で観た。
(松竹は何回もリバイバル上映をしていたし、横浜大勝館もよく上映するほど松竹の有名な作品だと子供でも分かりやすかった。)
観てから、この映画の哀しみは私のトラウマとなり、
安々と観ようとは思わなくなった。
何かで、あの父と子の旅のシーンを観るだけで、
哀しみが身体中を騒ぐほどである。
(そういう、もう観られない映画ってある。
観たくないキライ酷い映画だから観たくない、ではなく、
作品は評価できるが、悲しくてどうしょうもない映画。
同様に『火垂るの墓』がある。)
今日観たのは、縁、なのかもしれない。
今日、観なければならなかったのかもしれない。
脚本の熱意。
撮影・演出・俳優の見事さ。
人の体温や匂いが漂う、その生命。
うわぁ懐かしい、
森田健作さんの脚の長さに驚き、加藤健一さん(演劇界の国宝)のハンサムぶりに見惚れ、
島田陽子さんは幸薄い役が似合うというか、なんか貧乏ったらしいというか、
あれこれミーハーに観ていたが『宿命』が流れ父と子のシーンになったら声をあげて涙が止まらなくなった。
やはり、トラウマ、再びである。
私はもう中学生ではない。
でも、やはり、本作の殺意が、
いまだにどうしても分からない。
殺すほどのことはない。
人を殺す程のことなんてないのだ。
でも殺さなければならない命がある。
それも宿命なのだろう。
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