「圧巻の人間ドラマ」砂の器 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻の人間ドラマ
松本清張氏の私の印象:例えば、時刻表を駆使した緻密なプロットが醍醐味の推理小説作家。
だが、この映画を観ると、推理の方はかなり端折っているのだろう。前半はご都合主義にも見える展開。突っ込みどころはたくさんある。その中で、地道な捜査が手掛かりを得るところが救われる。
けれど、後半、一変。ぐいぐいと迫ってくる。
子役・春田君の目力。
加藤嘉氏演じる千代吉の子を思う心。人生に・人々に諦めきった表情。
そして加藤剛氏の演技。単なる成り上がりの栄誉にしがみついているではないと思わせる、演奏会での演技。子どもを認めないのも、単に自己都合ではなく、それまでの人生を、微妙な表情で滲み出す。
まさしく”宿命”。
そんな芸達者の渾身の演技が、日本各地の映像、そこで繰り広げられる出来事、音楽と、何倍にも相乗効果を醸し出し、胸に迫る。
惜しむらくは、観光化した遍路しか知らぬ世代に、千代吉親子の生活が想像できるのか?
途中で行き倒れになる人も多かったであろう。
ハンセン病。今では治療法が確立された病。
けれど、この映画の、千代吉のころは、治療法もわからず不治の病。
村に診療所なんてないもの。
家に、村に招き入れてはいかぬ病原菌。感染させぬことが最大の防御。
自分たちが食べていくのが精いっぱいな頃。盗まれることも防がねばならない。
それだけにひどかった差別。
そんな万感の思いが押し寄せてくる。
きりん様
コメントありがとうございました。
私のレビューや体験にも興味を持って下さりありがとうございます。
きりん様も、いろいろな体験をなさっていらっしゃいますね。そんな体験記、いつか拝読したいです。
この映画のレビューはまだとのこと。投稿を心待ちにしています。
レビューがまだとのことなので、お返事、自分のレビューに書きました。
失礼いたします。
とみいじょんさん、こんにちはー
UHCRとの関わりとか、海外派遣のご体験、レビューを興味深く辿らせて頂いてますよ。フォロー正解(笑)
緒方貞子さんは素敵な人でしたね。
当作品はレビューは上げてませんが、40年前、ハンセン病回復者たちが運営する印刷所で僕は機械を回してお手伝いしていたことがあります。
台湾から10代の男の子が研修に来ていていまだに発症があるんだなぁと思いました。
ベンハーにもシーンがありましたよね。
ではまた♪
とみいじょんさん、共感有難うございます。
松本清張は社会派推理小説の草分けといわれていますが、リアリティーの中にあって、意外と荒唐無稽なトリックを仕込んだりしています。
特に「砂の器」の殺人トリックはケッサクはです。そのまま映画にしていたら深夜ドラマのようになっていたでしょうね。
清張は芥川賞作家ですから純文学の一面も持っていて、事件の背景に人間の尊厳とか人生の綾や皮肉のようなものを描いています。
この映画は、事件を大胆に脚色しつつも、原作のテーマ性を反映させて、原作を越えたと言っても良いと思います。